やまねとチェシャ猫の言い合いが、また始まりそうな雲行きに、真琴はやまねの手を取り、アリス直伝の必殺上目使いで説得を試みる。

「頼むよ、やまね。お前、偵察とかそーゆうの得意だろ?」

「……しょうがないな。じゃあ、その君の汗と匂いが染みた洋服を僕にくれるなら、行ってきても…」

「………………さっさと行ってこないと、一生、口もきかねぇーぞ…」

やまねの言動に引きまくった真琴の説得は、最終的には子供じみた脅しで一応、成功するのであった。



用意していたライトを点けて、チェシャ猫とやまねは洞窟内に侵入していく。

やまねもチェシャ猫も夜目が利くので、こういう任務には適任だった。

それを考慮しての白うさぎの人選だったけど、いかせん仲の悪い二人なので、心配の種は尽きない。

「なんで僕がよりにもよってバカ猫と…。真琴の頼みじゃなかったら…」

まだやまねがぶつぶつと、不満を漏らしている。

「やまね、いい加減にしろよ!俺だって、お前と一緒なんて……」

この洞窟はかなり奥が深く、距離を大分進んだ時だった。

ズウゥンという地響きが聞こえた。
それと右の横穴の天井からは、小石がパラバラと降ってきた。

やまねもチェシャ猫も
嫌な予感がした―――――。

予感は現実のものとなる。

突然、咆哮を上げて、横穴から巨大な熊のようなモンスターが現れた。

やまねとチェシャ猫はすぐに臨戦態勢を取り、やまねは袖に隠しているナイフを、チェシャ猫は細身の剣を構えた。

「やまね!ここで戦うのは不利だから、一旦、引くよ!」

「僕に指図しないでくれる?」

というと、やまねはモンスターに立ち向かって行ってしまう。

「あっ!やまねっ…待て、って!あーもう、こーなったら!」

チェシャ猫も剣を構えて、モンスターに切り掛かった。

仲が悪いとは云え、今まで戦ってきた仲間だからお互いの動きは判っており、息ピッタリなコンビネーションを見せるやまねとチェシャ猫。

そしてそれはあっさりと決着が着いた。

何度か攻撃を仕掛けて、モンスターの動きを読むと、やまねがナイフを投げて注意を引き付ける。
その間に、チェシャ猫が大きく飛び上がり、モンスターの頭にとどめの一撃を刺した。

チェシャ猫がピタッと綺麗な着地を決めると同時に、ズウゥッンという地響きと共にモンスターが倒れる。


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