しかしそれでも離れない帽子屋。
白うさぎは帽子屋の肩を掴むと、力任せに身体ごと引き剥がした。

「ぷっはっーー!おっ、お前!また、悪ふざけが過ぎるぞ!」

酔いのせいか、キスの余韻か、帽子屋は目をとろんとさせ、白うさぎを見つめている。

「うさぎちゃん………シよう」

「…………はあぁっ?!」

一瞬、何をするんだ?と疑問符を浮かべる白うさぎだが、帽子屋の行動に二の句が次げなくなる。

帽子屋は反転して、またベッドへと向かう。軍服の上着を脱ぎ捨て、ネクタイをしゅるりと解くと部屋の隅へ放る。

そのままベッドへ乗り上げてベッドヘッドに寄り掛かると、帽子屋は長い脚をベッドの上に投げ出して座った。

それから右手だけでシャツのボタンを器用に外し、白うさぎに見せつけるように自分のシャツの中へと手を侵入させた。

「来いよ、うさぎちゃん……」

帽子屋の蒼い瞳が妖しく光り、空いている左手を差し出して白うさぎを誘なう。

白うさぎは息を飲み、
帽子屋の妖艶さに釘付けになる。
今、見ている光景が白昼夢のようで
全然、現実味を帯びない。

だけど心臓はドクドクと早く打ち、血液は沸騰するほど全身を熱く駆け巡っている。
頭では警鐘が鳴っているが、熱く火照った身体が、頭の中までも脅かす。

それでもなけなしの理性を総動員して頭を振り、白うさぎはなんとか踏み止まった。

「ぼ、帽子屋!お前は酔っているんだ!
水でも飲んで、さっさと寝ちまえっっ!」

テーブルの上に用意されていた水差しからコップに水を注ぎ、白うさぎがそのコップを帽子屋に差し出した。

そしたら帽子屋にコップ持つ手を引っ張っられた。

「うわぁっ!」

手から離れたコップは割れずに、床を水浸しにしながら転がってゆく。

そして白うさぎの身体は見事に帽子屋の上に乗っかっていた。

「痛ってぇーな、ったく……」

「ふっふっふっ、うさぎちゃ〜〜ん♪」

身体を起こそうとした白うさぎに、上機嫌の帽子屋が抱きつく。

それから白うさぎの頭の上の長い耳に、ふうーっと息を吹き掛けたのだ。

「うわっ!お、お前、ヤメろって!」

ぞわっとした感覚が背中を走り抜けた。


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