アメジストの瞳が悩ましげに濡れ、ダムのその恍惚とした表情に帽子屋はニヤリと口角を上げると、顔を近付けて唇を重ねる。

「ふっ……んっ…っ」

ダムの腕が深く求めるように無意識に帽子屋の首へと縋る。
それに応えて、帽子屋は舌を激しく絡めた。

「んっ……あ…ぁ……はぁ…ん」

「これじゃ…お仕置きにっ…ならないな」

そう、確かに勝手に部屋に入って、勝手に不埒な行いをした罰だったはずだ。
なのに、今目の前にいるのは自分と同じく欲に溺れた獣のような帽子屋の姿。
少し自嘲気味な笑みを張り付け、自分と同じように反応してくれているのが嬉しい。

嬉しくって回した腕に力を込めて抱きしめようとしたら、帽子屋にその両腕を捕られベッドへと縫いつけられた。

「我慢の限界だと云っただろう?」

そう云うと帽子屋は腰を乱暴に打ち付け始めた。ギリギリまで引き抜き、一気に奥まで突き上げる。
身体の中をぐちゃぐちゃに掻き混ぜられ、ダムの意識は飛びそうになる。

「はぁあ……んっ!…もう…イく…うっ」

「ほら、…一緒にイくぞっ……!」

激しい律動にダムは壊れたように喘ぎ声を上げる。

「あ、あ、あぁ…っん…やぁ、ああぁーーっっ!!」

「くっ……っ!」

一際、高い嬌声を上げてダムが果てると、帽子屋も搾り取られるように、最奥に白濁を吐き出した。

放たれた熱に満たされる。
あの寒々しい空虚な部屋に帰って来た時とは違う、暖かい気持ちになった。

逢えなかった時間が埋まっていくような、心の中から癒される感じ。

身体を繋げただけなのに、こんなにも心が穏やかになるとは思っていなかった。
気だるげで手足に力が入らず、汗がしっとりと肌に纏わり付くのさえ、甘く心地よかった。

額に張り付いた銀糸の髪を愛おしい指で梳かれ、そのあとに優しいキスが落ちる。

「んっ、ぼ…うしや………」

ダムが帽子屋の名を呼んで、にっこりと微笑む。

綺麗な顔が汗や涙で汚れていたが、
本来の美しさが損なわれていないダムに、帽子屋も微笑みを返し、
また口づけるのだった。




ここは自分が帰ってくる場所。
そして彼が帰ってくる場所。

長い間、
一人だけの時間が日常だったから、
どうしていいか判らない時もあるけど、

ここに帰ってくれば、
必ず彼も帰ってきてくれることを信じて。



end.


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