もう一度部屋の中を見渡しながら、ぽすんとベッドに腰掛ける。
彼の温もりを探すようにシーツを撫でるが、手の平に伝わるのは冷たさしかなかった。

そのままダムは疲れたようにベッドへ倒れ込むと、微かにふわりと匂いが鼻先を掠める。

あっ、帽子屋の匂いだ。

シーツに顔を埋め、瞳を閉じれば彼の残り香に惑う。

帽子屋とこのベットで何度も身体を重ねたことが脳裏に蘇り、はしたなく身体の奥がくすぶる。
しばらく顔を合わせていなければ、もちろん触れ合うこともしていない。
それはダムを昂らせるのには充分だった。

ダムはそっと無意識に服の上から自身を撫でた。

「ふっ……」

やんわりと握り込んで、快楽を紡ぐ。でもすぐに服の上からでは物足りなくなり、ベルトを緩めて手を中へ差し込み、直に触れる。

久しぶりの自慰のためか、すぐに硬さが増し、先走りが溢れてくちゅくちゅと音を立てた。

「あっ……んっ…!」

艶やかな吐息も漏れ始め、擦るスピードが早くなると、もうやめることができない。

あともう少しで上り詰めると思った瞬間、

「何をやっている?」

と感情の篭らない声が降ってきて、ダムの動きを止めた。
夢中になっていて、全く気配に気付かなかった。

帽子屋が腕組みをしながら、戸口を背に立っている。

「こ、これは……」

顔色を無くし、しどろもどろにダムは言い訳を考える。

「続けろ」

「えっ……?」

「人の部屋で不埒な行為をしていたんだ。お仕置きが必要だろう?」

優雅な足取りで部屋の中に入ってくると、帽子屋は椅子をベッドの方へ向け、ちょうどダムの正面に座るようにする。

「それにお前も、そのままだと辛そうだから特別にここですることを許可してやる。さあ、遠慮なく続けろ」

帽子屋はニヤニヤとした愉しげな顔で見ている。

「ああ、その前に。その軍服だと見にくいから全部脱いで貰おう」

帽子屋の言葉に冷水を浴びせられたかのようにダムは青ざめた。

「帽子屋…す、すまなかった。もう……」

「ほら、早くしろ」

有無を言わさない声音で命令される。



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