「ぼ、帽子屋っ!?」

驚くやまねを無視して、指を舐めつづける帽子屋。

指を口に含まれると、また火傷をしてしまいそうなほどの熱さを感じた。

火傷の痛みと、先ほどまで薬を塗られていた指先の感じとは違う、ねっとりと絡み付く舌で指の股まで舐められ、やまねは取り乱す。

「やっ………やめろっっ!!」

顔を赤くしながら、手を引き戻そうとするけど腕力では敵わない。
手の感覚とその光景の視覚から逃れるようにやまねは目をギュッと瞑る。

すると執拗に舐めつづけられていた手が突然、解放される。

「じゃあ、礼は貰って行くぞ」

と、さらりとしたいつも通りの声が降ってきた。
そしてテーブルに置いてあった真琴からのお菓子を片手に、様になるウィンク付きで帽子屋は部屋から出て行ってしまった。

まだ状況を把握しきれないやまねは
それを呆然と見送ることしかできなかったのである――――――。




「って、最悪だと思うだろ?真琴っ!!僕、人を馬鹿にするのは好きだけど、馬鹿にされるのは大っ嫌いっっなんだよね!野蛮人、帽子屋めっっっ!!」

「…………あ、うん……まあ、取り敢えず、そのナイフしまおうか?…菓子はまたやるから………」

真琴が買い出しから帰ってきて数時間。

延々とやまねを宥めるはめになった、
真琴だった――。




end.




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