そんなアリスも可愛いと思いつつ、ポチは上官のご機嫌を直そうと話を変える。

「そう言えば、このお祭りの本番って、いつなんですか?」

「今日よ」

「………………」

きっぱり言い切ったアリスに、ポチは何も云えなくなった。
薄々、気付いていたが、ホントにアリスらしいって云うか………。

ポチは苦笑いするしかなかった。
するとそっぽを向いていたアリスが突然、

「あっ!」

と声を上げた。

「どうしたんですか!?」

「流れ星よ、ポチ!早く願い事しないと!!」

両手を祈るように組むと、アリスが真剣に、ぶつぶつと呪文のように願い事を呟いた。

「えっーと……短冊に書いただけではダメなんですか?」

「流れ星も願い事が叶う、ラッキーアイテムなのよ!」

「なるほど………じゃあ、今日は願い事し放題の究極のハッピーデイですね」

ポチの言葉にアリスは目をぱちくりとさせた。それから楽しそうに微笑み、

「うふふ、本当にそうね」

と先程まで拗ねていたとは、思えないくらいに、アリスの機嫌はすっかり戻っていた。

二人は揃って頭上を見上げる。

そこには天の川が流れる綺麗な星空が広がっている。
そしてポチとアリスの間を、夏の涼しい夜風が通り抜け、笹飾りをザアァーと揺らす。

「晴れて良かったですね」

「そうね。折角、笹も飾り付けしたんだし、やっぱり彦星と織姫には幸せになって貰いたいものね」

アリスは星空に負けない綺麗な微笑みをポチに向ける。

その笑顔は今だけは、自分に向けられているもの。

ポチはそれが嬉しくって、今度は心からの優しい笑みを浮かべて、アリスに答えるのだった。



ポチの短冊が爽やかな風に揺れる。

ずっと、このままアリスさんと
一緒にいられますように―――――と。




end.


- 5 -


[*前] | [次#]

目次 拍手

TOPへ



- ナノ -