「ずるいわよ!私の願い事だけ聞いて、自分のは云わないなんてっっ!!」
「あっ、ダメですよ!引っ張ったら破れてしまいますよ!」
危うく奪われそうになるのを、ギリギリで死守する。
そのまま身長差を利用して、ポチは自分の短冊をアリスの手の届かない位置の笹に結び付けてしまう。
それでもアリスは諦めきれずに必死にジャンプをして、ポチの短冊を取ろうとする。
スカートが翻るのも気にせず、ぴょんぴょんと跳びはねるアリスは、とても軍の上官には見えない。
そんな姿が微笑ましくって、ボチは目を眇めて笑ってしまう。
だけどアリスは、ポチにはお構いなしに、今度は少し屈んで勢いを付けて、高くジャンプをした。それでも短冊には届かず、指先を掠めて失敗に終わる。
しかし、上ばかりに気を取られていたアリスが着地した時にバランスを崩して転びそうになった。
「きゃぁ!」
「危ないっっ!!」
ポチが間髪入れずに、アリスの身体を後ろから抱き止めた。
「大丈夫ですか?」
「あ……ありがとう」
恥ずかしい所を見られてか、うっすらと目元を赤らめながら、アリスはお礼を云う。
ポチは気付く。
今、アリスの身体が自分の腕の中にすっぽりと収まっている。
強く抱きしめれば、折れてしまいそうな
華奢な身体。
ふわっと綺麗な金色の髪から、良い薫りがポチの鼻先を擽る。
多少、気が強くて強引な所はあるけど、強くって、明るくって、優しくって、とても信頼と尊敬ができる上司だ。
でも、上司である前にやはり彼女は女性で、自分が守らなければならない、大切な人だと思う。
そう想うと、無意識のうちにアリスを抱きしめる手の力が強くなる。
「あの……ポチ、痛いんだけど?」
「あっ!す、すみません!」
ポチは慌ててアリスから離れる。
「もうっ!そんなに願い事を知られたくないなら、もう聞かないわよ!」
アリスは、ポチが短冊を見るのを止める為に抱きしめたと誤解したらしく、頬を膨らませ拗ねてしまう。
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