帽子屋が自己嫌悪に陥りそうになっていると、
「…って云いたいところだけど、お前にヘンに拗ねられてもめんどくせぇしなー…」
と白うさぎが言葉を続けた。
そしていつものように
ニカッと爽やかに笑い、
「まあ仕方ないから……そうだな、二人ともまとめて助けちまうわ!」
といとも簡単にきっぱり云う。
その言葉に帽子屋は軽く目を瞠る。
予想外の言葉。
いや、予想以上の、白うさぎらしい台詞。
やっぱりうさぎちゃんには勝てない――。
出会った頃から変わらない。
何時の間にか、するりと相手の懐に入って、何時だって迷わず相手に救いの手を差し延べる。
深い闇から救ってくれるのはいつも彼だった。帽子屋にとって白うさぎは道を照らしてくれる眩しい存在なのだ。
帽子屋はクスッと口元だけで笑い、
「好きだぞ、うさぎちゃん」
「っ!…な、なんだよ!気持ち悪りぃ…」
長い耳が垂れ下がり、なんとも云えない複雑な表情で白うさぎは嫌そうにする。
「つれないなぁ……折角、人が『愛の告白』をしているのに」
「男にモテても全然、嬉しくない……」
「真琴も男だぞ」
「〜〜〜っ!!」
白うさぎの苦虫を潰したような顔を見て、帽子屋にしては珍しく、アハハと声を立てて笑う。
一度気に入ってしまうと、なかなか手放すことなどできない。
下手な嫉妬に、醜い独占欲。
おまけに身勝手で高慢で、
自尊心の塊のThe Mad Hatter――――。
だけど、この先白うさぎが真琴を、真琴が白うさぎを選んだとしても、あっさり引き下がってしまうかもしれない。
だって、
白うさぎが真琴のものになっても、
真琴が白うさぎのものになっても、
白うさぎも真琴も、
全て自分のものなのだから―――。
end.
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