「えーと……うん、真琴はいい奴だよな。どんな奴にも気遣いが出来て、優しいし。異世界から来て大変だっていうのに、あのほっそい身体で健気に明るく頑張っているしな…」

真琴のことを語る白うさぎの顔は、僅かに赤くなりながらも優しい表情になる。

そんな白うさぎを見ていたら、帽子屋の胸にもやっとしたものが生まれ、ふとした疑問が頭をもたげた。

思わず口からついで出る。

「なぁ、うさぎちゃん……。もし俺と真琴、どちらしか助けられないとしたらお前はどちらを助ける?」

「はあぁ?!なんだよいきなり」

「いいから答えろ…」

ブツブツと文句を云いながら、うーんと唸り、白うさぎは考えている。

最初は軽い気持ちで云ったなんでもない質問だったのだが、そこまで悩まれるとこちらもヘンに身構えてしまう。

そして白うさぎがたっぷり時間をかけて出した答えは………。

「真琴」

ぴくりと帽子屋はグラスを揺らす。

判っていたことだったが、多少なりとも帽子屋は傷付く。

わかっている―――。
ただのエゴだ。我が儘だ。
でも何時だって自分のことが一番であって欲しいと思ってしまう。
なんの見返りもなく、愛情が欲しいと、
渇望してしまう。
下手な嫉妬だ。醜い独占欲だ。


…じゃあ、自分はどうなのだろう?

白うさぎと真琴―――。
どちらか一人しか、
助けられなかったとしたら………?

帽子屋は自問自答する。

きっと、真琴を助けてしまうだろう。

白うさぎと同様、帽子屋も真琴のことを愛おしく想っている。
決して、真琴と白うさぎを両天秤にかけて選んだ結果じゃない。
帽子屋にとって二人ともかけがえのない大切な人だ。

ただ、真琴を選んでも白うさぎが恨んだりしないということ。帽子屋を嫌いになったりしないということ。

帽子屋は自分がかわいい。
自分が傷付きたくない。
好きな人に嫌われたくない。

自分でも笑ってしまうほど、身勝手で高慢で、自尊心の塊。

結局、白うさぎを揶揄うのも試しているだけなのかもしれない……。
自分を嫌いになったりしないかを……。

白うさぎに甘えているだけなのだ。




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