白うさぎと帽子屋はよくこうやって酒を酌み交わし、酒の肴に色々な話をする。
他愛もない世間話から仕事や昔のこと。それにこれからのこと。

でも色んな話をするが、酒の席でお決まりの女の話はあまりしなかった。

何故かと云うと、白うさぎが苦手にしていることもあるが、たいてい帽子屋の華麗なる女性遍歴を聞かされ、白うさぎが辟易して、終わるパターンになるからだ。

あとは白うさぎが、女にモテないと愚痴るパターン。
実際そんなことはないのだか、白うさぎ自身はそう思っているらしい。

白うさぎは真面目で面倒見が良く、人好きのする笑顔で誰にでも接するから、子供から年寄り、同性にも好かれる。

外見も長身に鍛えられた逞しい身体、顔も精悍で整い、特に強い意志が宿る紅い瞳が印象的だ。

それにその男らしい外見に不似合いな兎の耳と尻尾。このギャップが可愛いと云う輩も多い。

そんな白うさぎを女が放って置くわけがないのだ。
ただ、本人が気付いていないのと、多少の女性への苦手意識が邪魔しているだけで、確実に白うさぎはモテる部類に入る。

だけど女のことで右往左往する白うさぎが面白いので、帽子屋は何も云わずに黙って見て楽しんでいるのが現状だ。



そして今日もひと通り、くだらない世間話をして話題は仲間たちのことになる。

「それにしても、真琴もアリスもすっかり馴染んできているよなぁ」

「ああ、大分戦いにも慣れてきているし、最初の頃に比べたら雲泥の差だな」

「アリスなんか喜々として容赦なくモンスターを滅多打ちにしているもんなぁ……」

感心していいのか、呆れていいのか白うさぎは苦笑して云う。

「まあ、アリスもそうだけど、真琴も不思議な奴だよな……」

白うさぎの何気ない言葉に一瞬の空白の間が生まれる。

「…なぁ、帽子屋……。お前、真琴のことどう思う?」

帽子屋が手の中で弄ぶ、グラスの氷がカランと音をたてた。

白うさぎが真琴を好きなのは明白だ。
わかった上で帽子屋は聞き返す。

「どう、とは?」

「っ!だから!そのっ……」

白うさぎが顔を赤くし、しどろもどろになりながら言葉を探す。

そんな彼を見て、また楽しげに帽子屋はほくそ笑む。

「お前はどう思っているんだ?」

自分のことは、はぐらかして同じ質問を白うさぎに投げ返す。

「へっ?…俺っ?!」

白うさぎがまた動揺する。




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