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チェシャ猫はあれから自室に篭っていた。
とりあえず、暫く様子を見るということで落ち着いてしまい、チェシャ猫は日当たりの良い窓辺で、ふて寝を決め込むしかなかった。
なんだよ、みんな……人事だと思って。
このまま人間に戻らなかったらどーすんだよ!
とチェシャ猫はイライラして、時々尻尾を揺らす。さすがにこんな状況で楽しい昼寝とはいかない。
苛立ち紛れに、ふと窓の外を見ると陽だまりの中、二匹の猫が楽しそうにじゃれあっていた。
そういえば、猫だった昔は他の猫とじゃれて遊んだり、赴くままに色んな所に行ったりして自由気ままな生活だったよなぁ〜と懐かしくなる。
別に今の人間の姿、生活に不満があるわけじゃないけど、猫なら猫なりの楽しさがあったわけで……………。
そうだ!とチェシャ猫は思い付く。
久しぶりに猫になったんだから、この姿を思う存分に楽しんじゃえっ!と。
元々、ポジティブなチェシャ猫。
そう思ったら、行動は速かった。
今いる窓枠から軽い身のこなしで、ひょいっと、すぐ下の屋根に飛び乗る。
そして屋根伝いに段々に降り、あっと言うまに道端に着地した。
通りにはたくさんの人たちが行き交い、休日の午後ということもあって賑わっていた。
視界には人間たちの足だけが入る。
久しぶりの目線の低い世界――――。
キョロキョロとチェシャ猫は首を巡らし、四本足で歩みを進める。
ホントに懐かしい――――。
これだけ人がいると怖がる猫も多いけど、チェシャ猫は反対にワクワクしていた。
これから冒険に出る感じがして、胸が躍るのだ。
塀の上を歩き、
人では潜れない茂みを抜ける。
行けない所はない。何処にでも行ける。
そんな気にさえなってくる。
それで、ハートの王の城まで行っちゃって、結局そのまま居着いちゃったもんなぁー、と呑気にまた昔のことを思い出す………。
そして今日二度目の思い付き。
よーし、どうせならこのままお城まで行ってみよう!
と、また心をウキウキさせる。
この姿なら見咎められることもないはず。
チェシャ猫は足どり軽く、ハートの王の城を目指すのであった。
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