「……ち、ちょっと待てっ!なんでお前は猫耳が生えていないんだっっ!!」

「ああ、ああいう甘ったるい酒は好きではないからな」

と言って帽子屋が翳げたグラスには氷が入った琥珀色の酒が満たされていた。

「き、きったねぇぇぇぇぇーー!!」

真琴が絶叫して、帽子屋の手から逃れようと藻掻き、必死に手足をばたつかせる。

そこへ帽子屋の肩に誰かの手がポンッと置かれた。

「フッフッフッ……。帽子屋、僕にヘンな物を飲ませた揚げ句に、真琴に何抜け駆けしているのさ…」

これまた目の据わったやまねが乱入してきた。

「俺は別に飲むことを強要したわけではないぞ」

「なに、しれっと云ってるんだよ!確信犯なくせにっ〜〜!」

帽子屋がやまねに気を取られている。
その一瞬の隙を突いて、真琴は帽子屋の腕を振りほどき、漸く逃げ出すことに成功した。

二人から充分に距離をとりながら真琴は安堵の溜め息をつく。
そしてこの部屋に一人足りないのに気付いた。

「……あれ?チェシャ猫は?」

ついさっきまで、そこでご機嫌にお酒を飲んでいたチェシャ猫の姿が見当たらない。

そういえば、チェシャ猫は最初から猫耳に猫の尻尾。
だから影響はないはずだよなと真琴が考えを巡らしていると、ふと視界の端に、床に落ちている若草色を軍服が映った。

「あっ…………」

思わず声が洩れ出てしまった。


何故なら、その上には酔ったように
空いたビンにじゃれついている、
エメラルド色の毛並みをした
かわいらしい一匹の猫が
いたからであった――――。




to be continued???




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