そんな彼の様子を見てアリスは、くすりと笑う。

「……ん?何だ?…あ!どうせ俺にタンポポは似合わないとか思っているんだろ?」

「ち、違うわよ!逆よ!逆っ!白うさぎにぴったりだなぁと思って……」

「えっ?」

今まで、言われ続けてきた真逆の言葉に白うさぎは少なからず驚く。

「私の世界の他言語でタンポポは『ダンデライオン』ともいうのよ」

「ダンデライオン?」

「そう、意味は『ライオンの牙』。ギザギザした形が似ているかららしいけど」

タンポポを一つ取って、愛しそうに微笑み、アリスは言葉を続ける。

「いつも先頭を切って、剣を振るいながら立ち向かう姿が――『ダンデライオン』に似ているかなって」

アリスは柔らかくにっこりとした笑顔で、真っ直ぐに白うさぎを見て告げる。

ただ、ただ白うさぎは目を瞠るばかりで。
そんな風に言われるのは初めてで、嬉しく思う反面、気恥ずかしくもある。

すると不意に、アリスの笑顔に真琴の笑顔がダブった。いや、正確にはアリスがアリスの顔で笑っている姿が見えた。

とても魅力的だった。
真琴の笑顔とは違う、無邪気で明るくキラキラ輝く笑顔で。

頭では判っていたはずだった。
本当のアリスをちゃんと見ていたはずだった。
いや、外見に左右されてなかったか?

でも改めて再認識した。
アリスと真琴が入れ替わっていることを。

揺らぐ気持ちをはっきりさせる為にも、アリスと真琴を元に戻してやりたいと強く思い、また元に戻ったアリスも見てみたいと思った。

その時、どちらを選ぶのかは白うさぎ自身にも予測不可能だったが――――。




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