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日が傾きかけ、空が鮮やかな緋色に染まっている。
賑わっている街中を巧みに人を避け、白うさぎは風を切って全力で疾走する。
街を抜けて少し街道を走ると、向こうから大きな袋を肩に掛けて歩いてくる、見覚えのある人影があった。
更にスピードを上げて走り寄る。
思った通り人影はアリスで、無事な姿に白うさぎは安堵する。が、
「アリス!!こんな所を一人で出歩くな!まだモンスターがうろついてるかもしれないんだぞ!危ないだろーがっ!」
と、出合い頭にいきなりアリスを怒鳴りつけた。
ムッとしたアリスは反論する。
「別に、白うさぎに心配される筋合いはないわよ。それに帽子屋が昨日この辺のモンスターの残党を一掃したから、もう安全だって言ってたわよ」
「…へ?!」
「いくら私でもモンスターが出る所に、一人でのこのこと来たりしないわよ」
「そ、そうだったのか……よかった…」
アリスの言葉に、全力疾走の疲れと安堵感で膝をついて、白うさぎはへなへなと脱力する。
座り込んでしまった白うさぎを見て何を思ったのか、アリスは持っていた大きな袋を開けた。
「それよりも……ほら、両手を出しなさいよ」
いきなりそんなことを言われ、アリスを見上げる。白うさぎは疑問に思いつつも、徒労感も手伝って素直に従う。
すると差し出された手の平に、はらはらとたくさんの黄色い花が舞い降りてくる。
「っ!アリス、これ!?」
「その……わ、私も言い過ぎたわ。ゴメンナサイ……」
手の中に降ってきたのは、白うさぎの大好物なタンポポだった。
「……だから、お詫びと言ってはなんだけど、帽子屋に聞いて、美味しいタンポポが生えている場所を教えて貰ったのよ」
アリスが照れ臭そうに頬を掻きながら、視線はあさっての方向に向ける。
「……そっかぁ…サンキューな」
白うさぎもアリスのサプライズプレゼントに顔赤くし、照れた。
そのアリスの想いが詰まったタンポポの匂いを嗅ぐと、何故かとても幸せな気分になり、笑顔を浮かべた。
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