純全たる誠実に次ぐ | ナノ

初流乃をつれてバスルームに行った花京院が、苦い顔をして部屋に戻ってきた。

「初流乃くんの首に、星形のアザがあった」
「……ジョジョのと同じものが?」
「ああ」
「……彼は、DIOの息子じゃあ」
「それなんだけど、あの子はどうにも、DIOというよりは…むしろ、承太郎に似てると思わないか?」
「ますますわけがわからん」

二階堂はクッションに頭を埋めながら言った。どうやら考えることを放棄したいらしい。苦笑を一つこぼして、花京院は考えるようなポーズをとった。

「DIOがジョナサン・ジョースターの体を乗っ取ってから作った子どもだから、かもしれない」
「遺伝子がDIOよりもジョースターに傾いてるってわけか」

汐華初流乃、二階堂は小さく彼の名を呟いて、ひらめいたように言った。

「イタリア風に言ったら、ジョルノ・ジョバーナ……とすると、彼もジョジョだってわけか」

DIO BRANDOと右上に書かれた、彼女によく似た男の映った写真をつまみ上げる。口はへの字に曲がっていた。

「なんか残念そうだけど、どうしたの」
「だって、自分のひいひい…くらい?の祖父さんの、息子だし。ちょっとくらい私に似ててもいいじゃないか」

それをなんたって、また、ジョジョに似ているだなんて。むしろ、ジョジョだなんて。不機嫌そうに頬を少し膨らませた二階堂に、花京院は小さく笑ってから、そして思い出したように言った。

「そうだ、彼が裸足で外に居た理由だけど」
「ああ…」
「体に数カ所、打撲の跡と火傷みたいな傷跡があった」
「……そんなことだろうと思ったよ!ほんと、そういうところばっかり、本当によく似るんだ!」

ああもう、ろくな血統じゃないんだから!そう言うと二階堂はますます眉間に皺を寄せた。
ユノーが影から姿を表して、皮肉っぽく笑うと、慰めるように二階堂の体を包む。余計なお世話だ、とその尾を引きはがしながら、二階堂は言った。

「あの夫妻、さっき私になんて言ったと思う?」
「そう言う君こそ、なんて説明したんだい?」
「私がDIOの親戚で、汐華初流乃くんに偶然出会ったから、少し話がしたい、と」
「……ずいぶんとまあ、単刀直入に言ったものだね。それで向こうは?」
「信じたんだ!信じられるか!?本当、私が言うのもなんだが、ありえない」
「それで?」
「あの母親はどうぞ好きにしてくれと。あの男に至っては、『アンタはあの子どもの親戚なのか?だったらちょうどいい、おれの息子じゃないんだから、引き取ってくれ』とまで言い出した。本当、何考えてるんだ!仮にもあの夫妻、親だろう!」
「そうか…」

憤慨する要をよそに、花京院は神妙な面持ちでホットコーヒーをすする。すこし考えるようなそぶりを見せて、「それも、悪くないんじゃないかな」と呟いた。花京院の言葉に、二階堂は目を見開いた。

「今、なんて言った」
「悪くないんじゃない、って。まあ、あの子の意志によるけれど」

Oh my Goddess!!二階堂はまるで彼女の養父のように頭を抱えて小さく叫んだ。

「私は君が時々何を考えてるのか分からないときがある!」
「そんな思いつきで言ってるわけじゃあ無いよ。彼が本当にDIOの息子で、僕たちはその仇、だけど君は、ちょっぴり遠いけれど、本当に彼の血縁でさ。彼はジョースターの血統で、君だって戸籍上は、本当は要・ジョースターだ。それに彼は、おそらく、かなりの確率で虐待されていることが確か。…ともすれば、彼を引き取ったって、何もおかしくはないさ」
「道理が通っていても、そんな、子どもだぞ?ペットじゃないんだ」
「わかってるよ」
「まさかとは思うけれど……私にまた、人の人生を背負わせるつもりなのか」
「まさか」

花京院はわざとらしく肩をすくめて言った。

「僕が彼の父親になろう、それで、君は母親。そしたらほら、半分こだ」
「………は?」

二階堂は耳を疑った。目の前で花京院はにこにこと笑っている。

「もうすぐ承太郎のところにだって、子どもが生まれるって言ってたじゃないか」

この野郎、本気らしい。二階堂はもう一度、小さくOh my Goddess…と小さく呟いて。右手で額をぺちりと押さえた。任務で訪れることになったこの地で、まさかこんなことになるとは思っても見なかった。花京院は、そんな二階堂とは対照的に、いつものようににこにこと笑っていた。



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