10000! | ナノ

(※引き続き「もしも誠実主が普通にDIOの娘でジョルノの姉だったら」/混部で家族パロ/DIOとジョルノが誰おま状態/何でも許せる人向け/躊躇はいらない……覚悟してもらry↓)





「さっきはどうしてあんなに剣呑な雰囲気だったんですか」

洗い物を片付けながら、ジョルノが口を開く。彼らの父親は不機嫌なまま出かけてしまっていた。

「パードレもいつになく不機嫌でしたね」

ジョルノはなんでもないようなそぶりで、大皿を棚に押し込む。要は曖昧な返事をして、さりげなくジョルノから目をそらした。あまり触れたくないトピックだ、という要の意思表示を汲み取ってか、ジョルノは水分を拭き終えた鍋を持ち上げながら言う。

「まあ、パードレと要が喧嘩しようと、僕にはなんの関係もありませんが」
「そうだな」

要は残ったラタトゥイユをパックに詰め直す作業を終えた。

「それにしたって、要がパードレにあんな顔をさせたのは初めてだったので驚きました」
「そうかな」
「何を言ったんですか?」
「なんだったっけ」
「パードレ、まるで娘を嫁に出す父親のような顔でしたよ」
「……」

当たらずとも遠からずなそのセリフに、要はどうしてわかったんだ、という言葉をぐっと喉に押し込んで、冷蔵庫にパッキングされた食べ物を詰め込んだ。ついでに野菜も何が残っているのかチェックしていく。急な来客もあってあらかたなくなってしまった中身に、明日の献立のために買い足すものをメモしておくためだ。

「要が僕に隠し事をしているかもしれない」
「さてね」

要はバタンと音を起てて冷蔵庫を閉じる。いつも通りのポーカーフェースだが、目を合わせないところを見ると、おそらく図星だろう。ジョルノはおおかたその内容も目星がついていないわけではなかったが、彼は要に隠し事をされるのが嫌だった。

「風呂湧いてるから、先入って」
「入ってきたら要は教えてくれるんですか?」
「……」
「白々しいにも程がある」

まったく、下手な隠し事は無駄だといつも言ってるでしょう。少し眉間に皺を寄せて、ジョルノは肩を竦めた。要は口を噤んだまま、今度は冷凍庫を開く。けれどそこに彼女の望んだものは入ってはいなかった。

「初流乃」
「ここに凍った一匹のクラゲがいます」
「まさか……お前…」
「そうです、要が楽しみにしている『白くまアイスバー』です」
「スタンドの無駄遣いはやめなさい」
「要が隠し事を僕にも教えてくれたら、返してあげましょう」
「……彼氏がいる」
「よくできました」

要はため息をついた。勝ち誇った笑みを浮かべてジョルノはゴールドエクスペリエンスを発動させる。クラゲをアイスに戻しながら、ジョルノは言った。

「まあだいたい予想はついてましたけど。承太郎さんといつも一緒にいる、あの個性的な髪型の人でしょう?」
「お前が言うな」
「承太郎さんじゃないのがちょっと不思議なくらいですね。要って、あんな優男みたいなのが好みなんですか?」
「……さあ」

ゴールドエクスピリエンスから受け取った白くまを口に突っ込んで、要はぼすりとソファーに腰掛ける。ユノーがPS3を立ち上げた。投げられたワイヤレスのコントローラを上手くキャッチしてジョルノを見やれば、「ぼくもやります」という色の良い返答が返ってきた。嬉しいのか、ユノーは尻尾を振りながらにやりと笑う。

「まったくパードレも子どもですね」

要の隣に腰掛けながらジョルノが言った。お前も大概だけどな、という言葉を喉に引っ掛けたまま、要は曖昧な相槌を打つ。

「自分はエリナさんのファーストキス奪っといてアレですからね」
「ジョナサンさんに泣くまで殴られたらしいな」
「パードレはいつもだいたい自業自得ですね」
「いろんな人に借りを作って返さない人間だからな。……あ、そういえばまた初流乃のプリン食ってた」
「……そろそろ波紋疾走喰らわしてもいいんじゃないですか」

目が笑っていない弟に、相変わらず無表情の要は口から乾いた笑い声をこぼした。


(弟は既に知ってることでも姉が自分に隠し事をするのが嫌)
(姉はアイスにつられて秘密を暴露したとかそんなことはある)




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