10000! | ナノ

(※もしも誠実主が普通にDIOの娘でジョルノの姉だったら/混部で家族パロと言った方が正しいかもしれない/DIOが誰おま状態/つまり何でも許せる人向け/覚悟はいいか?……俺は出来てる↓)









「父さん、起きろ。寝すぎだ」

要は少し呆れたような声でそう言いながら、未だベッドの上で寝息を立てる大柄な男を揺さぶった。時間は夕方を過ぎた頃で、要はちょうど買い物を済ませて学校から帰って来たところである。広すぎる間取りのこの家の、広すぎる部屋に広すぎるベッド、その中央で未だに眠り続ける大男に、要は少々辟易としていた。

「もう夕方だ、起きろ」
「……」
「起きろと言っているんだ、何度も言わせないでくれ!」
「あと五分…」
「……本当に五分で起きてこなかったら灰にするからな」

要はため息まじりにそう言い残して、揺さぶっていた手を離す。はあ、と小さなため息一つ、夕食(彼女の父親にとっては朝食だが)の支度に取りかからねばと膝を立てた。生徒会で遅くなると言っていた初流乃だって、もうすぐ帰ってくる頃だろうと思ってのことだ。いつまでもこの自堕落な生活を送っている父親に割いている時間は無い。要は無駄なことは嫌いだった。

「待て」

しかし要の腕は掴まれて、その逞しい腕の間に引きずり込まれた。じたばたともがいてみるが、こうも抱きすくめられてしまっては抜け出せない。ひとたびすり抜けようものならば、ザ・ワールドを駆使して沈めてくる。キングサイズのベッドの呪縛だと要は苦々しく思った。

「……父さん、今日はジョースターさんところに用事があるって、昨日言ってただろう」
「ジョジョのことなど放っておけ」
「いい歳して子どもみたいな駄々を捏ねるな……今日はブチャラティとミスタがうちにくることになってるんだ、もうすぐ初流乃だって帰ってくる。夕飯が食べられないのは父さんだって困るだろ」
「WRY……」

もぞもぞと要を抱き枕にするかのようにして、DIOは再び惰眠を貪ろうとする。何を言っても無駄か、要はだいぶ痺れを切らしたのか、ため息を一つ。ドスの利いた声で言った。

「そろそろ五分経つんだが。冗談抜きで灰にするぞ」
「起きる」

鶴の一声とはまさにこのこと、きっと初流乃がいたらそう思うだろう。我が家の鶴はどす黒く液体窒素のように冷たい殺気を持っていなくては勤まらないらしい。DIOは伸びをしながら大きくため息をついた。

「娘が冷たい……最近は初流乃だって……」
「アンタは(仮にも)夜の帝王だろう、何情けないこと言ってるんだ…」
「おい今副音声が聞こえたぞ」

要はドン引きした、と言わんばかりの目でDIOを一瞥する。だいたい初流乃だって風呂上がりに楽しみにしてたプリンをアンタに食べられるだなんて悲劇さえなければ、そこまで冷たく当たることも無いだろうに。やれやれと肩をすくめながら、要は階段を下りた。
夕飯の調理を始めてからしばらくして、彼女の父がギシギシと階段を下りてくる音が聞こえた。要がそちらを見やれば、いつものようにビシッと決まった父親の姿。アルマーニのスーツなぞ着こなして、まるで先ほどまで寝こけていた男とは思えない品格と色気を纏っていた。要が毎度のことながら感心していると、それに気づいたのか、DIOはフン、と鼻で笑って言った。

「このDIOの娘であることをもっと誇りに思ってもいいんだぞ?」
「……、娘の彼氏に腹パン貫通させておいてよく言うわ」

いつもの無表情でスーパードライに打ち返した彼女の台詞はどうやら波紋疾走よろしく突き刺さったらしい。うっと胸を抑えるDIOは彼女の知っているいつも通りの父親だった。しかしはっと気づいて、要の両肩をがっしり掴む。「ちょ、ガレットが焦げる」という要の言葉を無視して、DIOは鬼気迫る顔で言った。

「おい、彼氏とは聞いていないぞ」
「言ってなかったからな」
「どういうことだ」

微妙な間合いで睨み合い、剣呑な雰囲気が漂い始めたころ。頃合いよくがちゃりと玄関の戸が開く音が二人の間に割って入った。

「ただいま帰りました」
「おかえり初流乃」
「ちょ、なにやってるんですか。ガレットが焦げかけてますよ」

DIOの気が逸れたのをいいことに、要はユノーを使ってDIOの両腕からすり抜ける。DIOの手元には狐型のスタンドだけが残った。ユノーはDIOの顔面をバシリとその尾で叩いてみる。DIOはその狐の尾をねじ切ってやりたくなったが、間もなく娘の脚もねじ切れるので諦めて狐を放した。

「あれ?ミスタとブチャラティは?」
「もうすぐ来ると思います。あと、ナランチャとフーゴも。要の料理が食べたいそうです」
「……人数が増えるなら電話しろとあれほど」
「おい、うちには六人分のカトラリーしかないぞ」
「じゃあパードレの分が足りませんね」
「父さん、外で食べてきてもらっていいかな」
「お前らこのDIOを何だと思ってるんだ」




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