「俺、お前のこと好きだったんだ。俺はお前をずっと愛し続ける自信がある。だから傍にいてくれないか?」
「も、勿論だよ佐藤くん!私、佐藤くんのためなら何でもするよ!」
手が震える。
顔が熱くなる。
画面越しとはいえ大好きな佐藤くんに告白されたんだから興奮するのは当たり前だ。この画面さえ存在していなければ、と画面の存在を忌々しく思いながらも私の興奮は収まらない。
「佐藤くんフォーエバーァァァアア!!!」
嬉しさのあまり大声で叫んでしまった。
「おい、うるさい」
案の定隣の部屋で寝ていたであろう弟の次郎がドアを荒々しく開けて私の領域へと入ってきた。
「だ、だって佐藤くんが…!私のこと好きって!愛し続けるって!!」
次郎はまたかといったような顔をして溜め息を吐いた。
「どうせまたゲームだろ。姉さん、そろそろ現実見た方がいいよ」
「フッ、受験のことなら心配ないわ。なんたってうちの学校はエスカレーター式なんだから!」
次郎も同じ学校なんだから知っているのはわかっているが念の為言っておいた。
「そういうことを言ってるんじゃなくてそろそろ現実に彼氏ぐらいつくれってことだ」
「なっ、余計なお世話よ!私には佐藤くんがいるんだから!それに私は、」
"現実の男なんて信じれない。"
そう言おうとした。
だが次郎が私の言葉を遮った。
「そんなんだから鬼道にフられたんだよ」
次郎にこの台詞を言われるのは久しぶりだ。もう両手じゃ数え切れないぐらい言われているかもしれない。
「フられてないし!自然消滅だし!」
近くにあったクッションを思い切り次郎の顔面めがけて投げてやった。だが流石は次郎。サッカー部で鍛えた反射神経は伊達じゃない。それとも私のコントロール力がないのだろうか。投げたクッションは虚しく地面に落下した。
「そんなもん一緒だろ。とりあえず頼むからさっさと寝てくれ。明日寝坊して俺まで巻き添え食らうのはごめんだからな」
次郎はそう言って自室に戻って行った。全く、これじゃあどちらが年上なのかわからないじゃないか。
それにしても鬼道くんのことなんて久しぶりに言われた気がした。
自然消滅、なんて後味最悪である。
鬼道くんとは彼が雷門に行ってからは会うどころか連絡すら取っていない。
好きだった。私の中ではもう既に鬼道くんは過去の人となっている。
だからさっきみたいに次郎に過去を掘り返されると私はついムキなってしまう。
「未練なんてないけどさ…」
窓の外の暗闇を眺めていたら眠気に襲われた。
今日はもう寝よう。
あ、そういえば明日は始業式だっけ。
宿題やってないなぁなんて考えているうちに私は深い眠りに落ちた。