「おぉ…送れた」 1月1日。午前0時。私は日本中の強敵たちに打ち勝ち、見事0時丁度にメールを送ることができた。送信先は彼氏である涼野風介。風介のことだ、きっと寝ているに違いない。多分返信は朝だろうという予想はついたのでいつもの就寝時間より早いが私は明日の初詣に備えて寝ることにした。 「渉、渉…起きろ」 「ん…っ」 何度も名前を呼ばれ重い瞼を上げると視界には、 「…!?ふ、風介っ!」 「あけましておめでとう」 「うん、あけましておめでとう。じゃなくて、なななななんで風介が家に…!」 チラリと時計を盗み見た。 「今4時だし!」 未だ私に馬乗りの状態である風介に少しドキドキして私の眠気はすっかり吹っ飛んだ。「渉に会いたかったから。それだけじゃ駄目か?」 そんなかっこいい顔で聞かれて駄目なんて言えるはずもない。 「いや、駄目じゃない、けど」 「それにあんなメールを送ってこられて家にじっとしているなんて無理だ」 風介はそう言うとポケットから携帯を取り出し数時間前に私が送信したメールを開いて私に見せた。 "あけましておめでとう!2011年もよろしくね。今年は去年以上に風介と一緒にいたいです(笑)
たくさんデートしよう!"自分で打った恥ずかしい文字の羅列に思わず目を逸らした。「なんか、改めて読み返すと恥ずかしいね」 「私は嬉しかったよ。渉はメールでしか素直になってくれないからね」そう言っていつもの綺麗な笑みを零した風介。 「今夜は、一緒に寝て良いか?」 時刻は4時を少し回ったぐらい。こんな時間に風介を追い返すわけにもいかないし寧ろ私も風介と一緒にいたかったので「いいよ」と答えた。律儀に「お邪魔します」と言って布団の中に入ってきた風介は私を抱きしめた。どうやら私を抱き枕にして寝るつもりらしい。風介の体温が少し冷えた私の体を温かくした。 「風介、好きだよ」 いつもなら絶対に言わないような言葉だ。だけど今日ぐらい、素直になってやろう。少し間を置いて風介が口を開いた。 「私は…好きじゃない、 愛してる」その瞬間、風介が私の胸に顔をうずめてきて私の心臓はうるさく鳴り響いた。 今夜は眠れそうにない。