彼が死んでから、もう十年以上が経った。私は未だ彼の死から抜け出せず毎年彼の命日に帰国し、こうして墓前に立って悔し涙を流すのだ。
私は彼を殺した奴が憎い。親のコネで罪をもみ消したと聞いたときは本気でそいつを殺しに行こうとも考えた。
幾年が過ぎ、私は弁護士になることを決めた。何年かかったっていい。彼を、ヒロトを殺した奴をいつか刑務所にぶち込んで罪を償わせてやる。私はあの日墓前でそう誓ったのだ。だが英語もろくに話せない私が外国の司法試験に合格するのは容易なことではない。気付けば十年以上時が過ぎていた。
 
「来てたんですね、渉さん」
 
不意に声をかけられ涙をこすり振り向くとそこにはやはり彼がいた。一年前よりも身長が伸び、以前より少し大人びた雰囲気の彼に時間の流れの速さを感じた。
 
「久しぶり、ヒロトくん。大きくなったね」
 
「少し身長が伸びた程度ですよ」
 
ヒロトくんは微笑むと私の隣で手を合わせる。
 
「まだ、弁護士目指してるんですか?」
 
「うん。約束したから、ヒロトに」
 
「けどもう十年以上も経ってるんですよ?今更裁判起こしたって…」
 
「わかってる!」
 
突然私が大声を出したのでヒロトくんは驚いたように目を丸くして私を見た。
 
「でも、許せないのよ。ヒロトを殺したくせにのうのうと生きてるあいつがすごく憎いの。何回司法試験に落ちたって絶対諦めない!私は何年かかったってあいつに罪を償わせるわ!」
 
殆ど息継ぎもせず怒鳴ったせいか、私の額には汗が滲んでいた。
そんな私の様子を見てヒロトくんは慌てて「すみません、余計なこと言ってしまって」と言ったので私は彼に申し訳なさを感じた。ヒロトくんはなにも悪くないのに。
 
「私も、ごめん。ヒロトのことになると感情的になる癖、治さないとね」 
「渉さんにそんなに思われて吉良ヒロトさんは幸せ者ですね」
 
「そう、かな」
 
なんと応えればいいのか躊躇っている私を見てヒロトくんは口を開いた。
 
「俺、渉さんのこと好きなんです」

は?私を好き?ヒロトくんが?
突然の告白に私は開いた口が塞がらなかった。
 
「吉良ヒロトさんの代わりでもいいから、俺を渉さんの傍に居させて下さい」
 ヒロトくんはそう言うとぎゅっと私を抱きしめた。その体は、もうすっかり大人の男の人の体で、私の体を温かく包み込んだ。
 
 
私と彼の心はまだ、
 
 



 



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