「マーク、セックスしよう」 直球すぎる私の言葉に隣にいる恋人、マークは読んでいた雑誌をめくるのを止め、困ったような顔で私の頭をぽんぽんと叩いた。 「またそれか。俺達は中学生なんだからまだ早いだろ」 「そんなことないわ!ディランは毎晩彼女と愛を育んでるって言ってたもの!」 「ディランのことは俺達には関係ない」 マークにピシャリとそう言われ私は少しムッとした。私は特別スタイルがいいというわけではない。だが私とマークとはかれこれ一年以上も付き合っている。なのに関係はキス止まり。キスと言ってもディープなんてもってのほかで軽く触れるようなキスしかしたことはない。今までだって私が何度か押し倒してみたり色仕掛けでそういう雰囲気に持って行こうとしたのだが毎回マークにはぐらかされたりして今に至る。マークが私を大切にしてくれているのは十分理解している。だがここまで頑なに拒否されると結構傷付くものでマークは本当に私のことが好きなのだろうかとか余計なことまで考えてしまう。 「マーク、ほんとに私のこと好き?一年以上付き合ってるのにキス止まりっておかしくない?そりゃあ私、胸小さいし色気なんて皆無だけど一応生物学的上は女だし…」 「何言ってるんだよ。好きに決まってるだろ」 「じゃあなんで…」 私が言葉を濁らせて俯いているとマークの腕が私に伸びてきて頭を引き寄せられた。 「え、なに…んっ… 」 気が付けば私の唇はマークの唇によって塞がれていた。「んぅ…はぁっ…ちょ、苦し、っ…」 いつもの触れるだけのキスではない深いキスに私は驚いた。いつの間にやらマークの舌が私の口内に侵入し、いやらしい音を立てながら舌を絡めてくる。 (マークってばこんなキスどこで覚えてきたのよ…!) そんなくだらない事を考えているうちにだんだん息が苦しくなり私はマークの肩を掴みグイッと引き離した。私達を繋いだ銀色の糸に羞恥心が心を覆う。 「今はここまでだ。続きはいつかちゃんとやってやるから今は我慢してくれ」 私がムスッとしているとマークは「セックスしない理由、渉の体を大切にしたいってだけじゃ不十分か?」と真剣な眼差しを私に向けて言った。私がマークの真剣な顔に弱いってことをマークは知らない。本当に罪な男だ。そんなかっこいい顔で見つめないでよ。 「…十分すぎる理由よ。ごめん、私、焦りすぎてた」 私が謝るとマークは「なんで渉が謝るのさ」と言って先程とは違う優しいキスをしてきた。 今日も私は 君に、敗北。