空は雨模様。そんなこと関係なしに私は快楽を求めて腰を動かし続けている。 「姉さん…、今すごいやらしい顔してる」馬鹿なこと言わないで、と私は次郎の首に巻き付けた腕を引き寄せた。 「さっさと、楽に…ん、させなさいっ…!」 仕方ないなぁといった風に次郎は先程の焦らすような行為とは違うガンガン突いてくるような行為を始めた。 「うっ…イくかも…っ」 「一人でなんてイかせないからなっ…」 次郎がそう言った瞬間、私たちは絶頂を迎えた。 「気持ちよかった?姉さん」 情事後だと言うのに余裕ぶってる次郎にイラついて私は素っ気なく「分かり切ってること聞くな」と言い次郎を抱きしめた。すると、可愛いね、なんて次郎が言い出すからもっと強く抱きしめてやった。私は全然、可愛い女なんかじゃないのに。 私はおかしいと思う。勿論毎晩私の部屋に来て私を押し倒してくる腕の中の弟の次郎も充分おかしいと思う。だがそれ以上に私はおかしい。毎晩実の弟との性行為に勤しんでいるからだけではない。勿論それもあるが、私には恋人がいる。しかもその恋人は次郎と仲の良い源田だ。つまり私は、源田を裏切っていることになる。源田は私のことをすごく大切にしてくれるから手なんて絶対出してこない。それは彼なりの優しさなのだが並より少し性欲が強い私は純粋すぎる源田との付き合いにだんだんとストレスが溜まってきていた。そこに漬け込んで来たのが次郎だ。体だけでも俺のものになってくれ、と言われたときは椅子から転げ落ちそうになったがそういうことに飢えていた私はあろうことか実の弟とヤってしまったのだ。その日から次郎は私の部屋に毎晩訪れて私を押し倒す。もうその行為は日課のようなものになってしまってここまで来てしまっては後戻りなんて出来ないことを私は理解していた。次郎が自室に戻り一人になるといつも源田に対する罪悪感が心を包んだ。だが次郎との行為を楽しんでいる自分も心の中にはいて心底自分は馬鹿だと嘆いた。 「なぁ、もう源田なんかやめて俺にしとけよ」 先程まで私の腕の中にいた次郎が急に起き上がったかと思うと私を見据えてそう言った。次郎は最近こういうことをよく言うようになった。 そんな寂しそうな顔しないでよ、と私は心の中で呟いた。次郎だってわかってるはずなのに。姉弟の私達は永遠に結ばれることはないということを。 「嫌よ。私、報われない恋をするほど愚かな女じゃないの。それに私は、…幸せになりたいの」私がいつも通りの言葉を紡げば次郎はその言葉は聞き飽きたという風な顔をして私に軽く触れるだけのキスをしてさっさと自室に帰って行ってしまった。 私は窓の外の未だ止まぬ雨をただ見つめていた。 私はとっくに気付いていた。私の心はもう、源田にはないと言うことを。 胸を襲うのは、自分勝手な私への怒りだけだった。