※ 離さないで 3/5
「寝ていろ ドカスが」
そう言って部屋に入るのはヴァリアーのボス ザンザス
そして私の彼氏
『大丈夫よ 今日は体調が良いから』
そう言えば「カスが」と言っていつも彼が座る私のすぐ近くの椅子に腰かける
そしていつも通り目を閉じて君臨する
その隣で私は読んでいる本の続きを開いた
これがいつもの私達
彼はどんな時でもいつも側にいてくれた
手術中もヴァリアーの皆が手術室の外で待っていてくれていたのだと言う
それからずっと入院をしている私の元に来れる時はほぼ毎日来てくれている
この前 任務はどうしているのかと聞いたら
「そんな事を気にしているならさっさと治せ
ドカスが」
その一言で私は何も聞かない事にした
心配かけない様にしてくれているのはすぐにわかったからだ
後日ほかのメンバーに聞けばザンザスの仕事が皆に当てられているらしい
でもザンザスじゃないといけない仕事の時の見舞いはスクとかベル達が来てくれる
でもそれ以外は毎日と言ってもいい
でも今日は普段よりそわそわする
どうしてかわからないけど
私は途中で本を読むのを止めた
その動きに気付いたザンザスは目を覚めて私を見た
「…どうした」
珍しく声をかけてきたのはザンザスだった
でも自分もどうしたのかがわからない
『…ザンザス』
ザンザスに手を伸ばせば立ち上がって私の元まで来てくれた
そしてそのまま手を握ってくれる
温かくてしっかりとした手
守ってくれる優しい彼の手
『ザンザス』
名前を呼べば近づいてくる
私達は顔を近づけ唇が触れた
ザンザスが離れるのが無性に嫌で彼の首の後ろに腕を通して抱きついた
そのまま抱きしめてくれるザンザスに普段よりも嬉しさが込み上がってきた
「識桜」
あれから数時間が経ち そろそろ帰るザンザス
ベットで本を読もうとすれば 出ていくザンザスに声をかけられた
「…何かあったら呼べ」
いつになく真剣な顔付きで言われ 私は頷く事しか出来なかった
これが私から貴方を抱きしめる最後になるとは 予想もしていなかった
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