箱根学園自転車競技部 (1 / 5)
───美波ゆい目線───
「めんどくさい事になったのね」
『そうなんだよ〜…』
今日もいつも通り梨央と遥と一緒に食堂でお昼ご飯中なんだけど、梨央の言葉にわたしはため息を吐いた
それは今日の朝の出来事……
「今日の放課後、部活に来ないかね?」
いつもの様に梨央と女子寮から登校して、自分のクラスに入るのと同時に朝から同じクラスのとーどーと会った
そして第一声がこれだった
『…間に合ってま』
「間に合ってないのだよ!」
間に合ってます って言えば何とかなると思ったのに
『何 どうしたの?』
「見に来んか?俺の走りを!」
『あ、やっぱ間に合ってます』
丁重に断ったら ならん、ならんよ! と断りを拒否された
めんどくさ〜、でもとーどーが本当に走りを見せたいのはわたしではない
『そんなに走りを見せたいなら梨央を誘えばいいじゃん』
「で…できんのだ」
梨央の名前を出した途端、とーどーの体がピクリと反応する
梨央の連絡先を教えてから、毎日とーどーから連絡を取ってるんだって
梨央にかっこいいって言われてから気になってるみたい
『なんでできないの?』
「梨央ちゃんが電話を無視するのだ!」
とーどーの話によると、夜に電話をかけたりすると電話に出るみたいだけど 昼間とか学校で電話をかけても出ないらしい
でもそれって普通そうじゃない?
『忙しくて出れないだけでしょ?』
「普通はそう思うものだが、梨央ちゃんは違うんだよ!
“学校で電話しなくても会いに来たら?”…とな!」
なんか惚気話を聞かされてるような感覚なんだけど、今のところ とーどーの片想いだよね?
梨央はどういうつもりで言ったんだろ?
お昼にでも聞こう
「ビジュアルからかっこいいと言われている俺をもっとかっこよくさせる時といえば、山神と言われている時だと思わんかね?
そういうことだから 今日の放課後、必ず来るんだぞ!絶対だからなー!」
わたしが違う事を考えてる間にとーどーはそう言って自分の席に戻った
その後 断ろうと何回か話しかけたんだけど、梨央が来ると楽しみにしているとーどーを見てると断りにくくなり 冒頭になるというわけ
「私がまどろっこしい言い方をしたからよね?
ごめんね、ゆい」
『いやいや、謝らないで!』
申し訳なさそうにする梨央の言葉に首を横に振った
「東堂に学校で電話しなくても会いに来たら?って確かに言ったけど、学校に居るのにわざわざ電話をする意味がわからないじゃない?」
だから学校の時にかかってくる電話はあえて無視しているという梨央の言葉に、ほんの少しだけとーどーに同情した
しかたがない、同情したのはわたしだけど 今度とーどーに何か奢ってもらおう
『まぁ、とーどーも部活は頑張ってるみたいだし、1回見に行ってみよーよ!なんか面白そうだしさ!
ね! 遥も行くでしょ?かいくんいるし!!』
「せ、せやね!い、行く……」
食べていた遥に話を振れば、照れながら答える遥
かーわーいーいー!!
わたし まだ話でしか聞いたことない新開くんをかいくんって呼んでるけど、照れてる遥が可愛いー!
「それにしても、遥よく食べるわね」
いつも通りだけど って言いながら中華丼を食べている梨央が遥の様子を見ていた
そんな遥はニコニコしながらお父さんが作った弁当を食べ終わってさらに唐揚げ丼を食べ終えて、現在アイスを食べている
そんないつもの光景に思わず笑みがこぼれながら わたしは唐揚げラーメンを食べ進めた
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