期待の素質、発見(1 / 3)






「シェリーさんはやっぱり凄いです!」

『凄くないわよ、能力を使っただけなんだから』

能力を使った私に尊敬の眼差しを向けるが、私は当たり前の返事を返す
能力者だから能力を使っただけ

『ほら、着いたわよ』

刀を預けている武器屋に着き、たしぎに声をかけながら武器屋の扉を開けた

『…あら』

そこにはさっき見た緑の髪の剣士が武器屋の亭主と話していた
そういえばあの剣士、どっかで見た事がある気がする

「シェリーさん?どうしたんですか?」

後に入ってきたたしぎは私の見ている方を見ると、何かに反応してそちらへと向かっていた
何に反応したかはわかっている

「あーーーっ!!!この刀はっ!!!
もしかして!!!」

食い付いたたしぎが眼鏡を上に上げながら 緑の髪の剣士の刀を見た

「これっ!!“和道一文字”でしょう!!?」

たしぎの食い付きに少し引き気味の剣士と、あまりの動揺を隠しきれていない亭主
あの亭主、わかっていたのがバレバレね

「そ…そういう名の刀だがな… まあボチボチの刀だな………」

「ボチボチだなんてとんでもないっ!!
これは“大業物21工”の1本!!名刀ですよっ!!
これ!これ見てください!」

そう言いながら刀剣マニアのたしぎはメモを取り出し熱弁し始める
これは周りから見たら営業妨害だろう、なんて思いながらもこの状況が面白いから静かに見ている私

「買おうとすれば1千万ベリー以上は下らない代物です!!」

ヒートアップするたしぎにとうとう亭主がキレ、机をばん!と叩く

「このクソ女 全部喋っちまいやがって!!!
営業妨害で訴えるぞ 畜生がっ!!!」

亭主とたしぎに私はため息を吐いた
武器屋が名刀を見極めれない訳がないのだから、名刀である事は理解しているに違いないとはわかっていた
だが刀剣マニア且つ ヒートアップしたたしぎを止めるのも面倒なのもわかっているから止めなかったが…

「お前はこの“時雨”を取りに来たんだろ!?
磨き終わってるよ!!」

困惑したままのたしぎだったが、亭主はたしぎの刀である“時雨”をたしぎに放り投げて渡した
だがそのまま飾ってある刀に突っ込むたしぎに また私はため息を吐いた
そして私は緑の髪の剣士の隣に立ち、剣士が私に気付く
だが私は先に亭主に声をかけた

『亭主 うちの者がすまないね
“風桜”の磨きは終わっているか?』

「あんたのも終わってるよ!ったく、部下の面倒ぐらい ちゃんと見たらどうだ!?
ほらよっ!」

そう言いながらも私の刀を渡す亭主に すまないね と苦笑しながら受け取り、左側に“風桜”を差す
そして代刀を亭主に渡した

「お前 さっきの」

緑の髪の剣士が私に声をかけ 私も彼の方を見た

『さっきぶりだな、それにしてもそんな名刀を持っていたなんてね
驚いたわ』

「そこの姉ちゃんとあいつの言う通り 価値も知らねェ男が持ち歩くにゃもったいねーほどの“名刀”だよ
そいつは!!
そこのタルに5万ベリー均一の刀がさしてある、好きなの2本持ってきな」

キレながらその剣士に言う亭主に なんであいつがキレてんだ… と小さく囁く彼に私はまた声をかけた

『それだけの名刀と言うことよ
でも、貴方なら見込みがあるから5万ベリー均一の刀より もっと良い刀を持つべきだと思うけど』

そう言って笑いかけたら何だか頬を少し赤らめた剣士
どうしたんだ?

「あれ!?あなたはさっき通りでお会いした人じゃないですか!?」

今更気付いたたしぎに剣士は軽く呆れており、私はまた苦笑した








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