お題1 | ナノ


▼ ギンガムチェックラブソング

ギンガムチェック、ひらひらのワンピース。水色と白の可愛いデザインは普段決して選ぶような代物ではなくて。今回勇気を出して買ってみた。
夏祭り、花火大会。二人だけでくるのは初めてだねと言えば妙に緊張した面もちでそうだねと頷かれた今日の昼休み。
向こうの部活があるのでそれが終わって準備も完了するであろう6時に待ち合わせをして別れた。
ちょっと、可愛いすぎるかな。でも、たまにはいいよねこういうのも。浴衣も着たかったけれど、着付けが上手くできないしお母さんは明日家にいないし。
来年着ればいっかなんてこの花火大会は今年で最後だから言えないけど、花火大会に浴衣というテンプレは去年まで散々してきたしいいかなって。それに、今までデートというデートをしたことないからお互いの私服を見たこともなくて。初めて見られる私服。普段制服しか見てないからギャップにドキドキしてくれたらいいのになあとかね。

友達はみんな言う。山口のどこがいいの?って。それなら一緒にいる月島の方が格好良いじゃん、って。確かにね、月島は格好良いよ。でもね、私はね、月島みたいな人より山口みたいに健気で努力家で優しい人が好きなの。山口だけレギュラーメンバーじゃないとしても、たった一度のために何本と練習する山口のひたむきさに惚れたの。
なあんて友達に言ったらからかわられるのも解ってるし、山口にも照れくさくて言ったことないけれど。
だから、山口に『可愛い』と思って貰えるかは私にとって死活問題で、それこそ、明日の花火大会に命を掛けているのだ。

ギンガムチェックのワンピースを壁に掛けてボフリ、ベッドに飛び込んだ。そうしたら急に携帯が鳴って、この音は通話かなあなんて見るとつい今さっきまで考えていた山口の名前が表示されていて。ドキリ、高鳴る胸を押さえながら着信ボタンを押した。

「もしもし?」
『あ、も、もしもし!?』
「部活終わったの?」
『うん、急にかけてごめんね』
「ううん、大丈夫だよ。……どうしたの?」
『いや、その、特に用事はないんだけど…明日楽しみだなあって』
「〜っ」

きゅん、胸の奥がこそばく疼く感覚がした。あーもう、本当に。どうしてこんなに私のツボを抑えているの?私も楽しみだよ、めいいっぱいのお洒落をして行くからね。言葉にならなくてもどかしいけれど言いたいことがたくさん次から次へと浮かんできて。

「山口、すき」

とりあえず全ての気持ちを集約したこれを言葉にしよう。電話の向こうで照れて焦る声が聞こえてきた。向こうも私と同じくらい好きでいてくれたらいいのになあ、なんてね。



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