黒子ショート | ナノ

「俺、君のことすきで」


言われた瞬間、ぴしりと体が固まった。二の句を言わせまいと口を挟もうとするが、それは許されなくて。


「俺と付き合ってほしい」
「ひ、ひゃあ……」


私は思わず情けない声を出した。心中ではぎやあああというくらいに奇声を発しているのだけれどさすがにそれはまずいと思って堪えた。しかしまずい状況には変わりない。放課後、私は図書室で時間を潰していて、そろそろ席を立とうというときに教室に忘れ物をしたことに気付き、ダッシュで教室まで向かって自分の机の中を漁っているときに偶然かどうかは分からないが彼が来た。同じクラスだけど名前を覚えていないのは関心が無いからで、元をたどれば私には彼氏様がいるわけで。


「あの、ごめんなさい。私、彼氏いるんで」
「あっ、そうなんだ……」


分かりやすくしょぼくれた彼に「バスケ部の青峰大輝」と追い討ちをかけるよう小声で呟けば、彼はまずいやっちまった的な顔をした。長身強面はこういうときに役に立つ。が、だいたい放課後に図書室で時間潰すのも久々に練習行ったと思ったら「もちろん待ってるよな?」と肩を叩いてきた青峰のせい。つまり告白なんてされちゃったのも待って当たり前みたいな言い方した青峰のせい!いや教室に忘れ物をした自分のせいですね分かります。練習さぼってほしくないし、何なら私余裕で待つし。普通の本は眠くなるから動物図鑑見ながら部活終わるの待つし。青峰もといアホ峰には「お前動物博士になんのか」と感心したように言われたがなるわけねーよまじでアホだ。でもそんなとこもかわいーとか思うわけでつまり大好きなんだよ。だから他の人になんて靡かないし寧ろ告白受けたくないし。一番の理由は青峰に対する申し訳なさ半分、恐怖半分であるけど。




「青峰がめんどくさがって私の教室来てくれないのがいけない!」


いろいろ考えて全てがない交ぜになった結果逆ギレっぽくなりました。あの後すぐさま体育館に向かったが案の定練習は終わっていて、入り口には佇む青峰がいた。一応告白されたことを伝えると彼は眉間にいくつもの皺を刻んだのでこうなったのだ。だってそうでしょ、嫌でも目立つ青峰が私のクラスに足を運べば誰も私に好意なんて寄せないでしょうが。言えば彼は押し黙った。なんて言うのか気になって、彼の横顔を見ていたら目があって、私の手をしっかりと握り一言。


「じゃあいつも一緒にいるか」


爆弾投下である。一気に顔に血液が集まり熱い。突然のことで取り乱してしまう。


「ちょ、それってどういう…」
「お前俺のクラスになれ」
「無茶言うな!」


そして胸の高鳴りを返せ!私の紅潮した顔を見てかリアクションを受けてかは知らないが青峰は大爆笑していた。なんて失礼な奴なんだ。


「それが一番手っ取り早ぇだろ」
「そうだけど!」
「ま、来年は同じクラスになるといいな」


手を再度握り直してこういうことナチュラルに言っちゃうから、困る。彼の中では来年も一緒にいることは確定らしい。もちろん私もそうだといいなとは思っていたが、まさか彼もそう思ってくれていたとは。小さく頷いて笑えば、青峰も目を細めて笑った。


「ま、これからは変な虫が寄ってこねーようにお前の教室にも行く」


あとお前に告ってきた勘違い野郎を絞めるために。青峰はそっちが真の目的なんじゃないかってくらい不適に笑んだけど、熱に浮かされている私はそれでもいいやって思ってたりする。

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