ディアマイスウィートビッチ! | ナノ

「一緒のベッドで寝るのに、やっぱりしないんだね」
「なまえはお金とるだろ。セックスは愛を確かめる行為なんだから金銭関係は持ち込まないって言ってるじゃん」

と言いつつキスはするんですね清純くん。ご満悦気味に私を見下ろす顔が、それは別の話だと揚々と語っている。

「今まで何人の子と愛を確かめ合ったのかしら」
「数知れずでも、そこには確実に愛があったはずだよ」

キヨに彼女がいないとき、彼は頻繁に私を家に泊めてくれる。キヨに彼女がいるときは会わないと言ってあるので、つまり私を家に呼ぶのは彼女と別れたときで、呼ばなくなったら彼女が出来たということなのだ。この一連の流れは数ヶ月のうちに4、5回は繰り返される。キヨのたらしっぷりは衰えることを知らない。

「キヨくんに会えなくて寂しくありませんでしたかー?」
「他の男に可愛がってもらってたのでなんにも寂しくなかったでーす」
「それはよかった」

ニヤリとやらしい笑みを浮かべながら寝そべっていた私の体を起こし、頭のてっぺんに置いた手を後頭部に滑らせて、撫でる。動作は表情と真逆で、割れ物に触れるように優しいんだから気に入らない。こうされると相手があのキヨであってもなんだか懐かしい気持ちになって落ち着いてしまう。心がくすぐったくなる。あの頃を、思い出す。


「しあわせだった」


真夜中にベットの上、男女二人が座っているというシチュエーションなのに、そこにピンク色の甘い雰囲気は存在しない。とっくに暗さに慣れた目は、キヨがうんうんと頷くのを確認してからゆっくりと閉じられる。

「あいが」
「アイ?」
「あい……愛が、ほしい」

キヨは、優しい。ただそれだけじゃなくって、演じているというか、それ以外の顔ばかり表に出すだけで、本当は本当にひとを思いやれる。私はそう分かっててキヨに会いに行くのだ。私は、最低だ。

「いつだってあげるよ。俺はなまえのことをいつでも愛してる」

自分の部屋に帰るのは嫌だ。誰もいない、暗くてじめっとした無機質な部屋には帰りたくない。一人でいるのは嫌だ。心細さで胸が千切れそうになる。人を本気ですきになるのは嫌だ。絶対なんて、永遠なんて、この世に存在しないのだから。無い物ねだりなんてしない。それほど私は強くない。私は寂しかった。寂しい人間だった。

「俺はいつも、本当のなまえを見てる」

キヨの声が優しく耳元で溶ける。キヨの胸にぴったりと頬をくっつければ、彼の心音と体温を感じられる。あたたかな、生の証。

「俺はなまえのお父さんみたいになまえのお母さんを裏切らないし、なまえのお母さんみたいになまえを一人にしない」

唱えられる言葉たちを溢さないように吸収する。心臓の拍動と共に溶けるそれは浮遊感すら与えるほど。


「わざわざセックスに金を求める理由もわかってる」
「俺は待つよ」
「なまえが信じられるまで、いくらでもチャラい男になるよ」


キヨにいつでも彼女がいて、たまに間隔を空けては私とこうやって会うのは全部、私のためなのかもしれない。
私ね、キヨのことすきなの。言えない。そんなこと、絶対に言わない。難しいかんじょうろんなんて全部シカトして、私は私の殻を被る。

今はただ、優しい人の胸のなか。そうして明日にはきっと違う人の腕に抱かれるのだろう。そうじゃなきゃ私、寂しくてしんじゃうの。

明日隣にいるひとはだぁれ?

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