朝起きたら隣にクロロが寝ていて、不法侵入もいいところだけど二日酔いがきついのでとりあえず放置してキッチンに向かう。肩から布団が落ちかけていたのでかけ直してやるのは忘れずに。リビングではフェイタンとシャルがコーヒーを飲みながら株番組を見ていた。頭に響くから音量を下げろと言って冷蔵庫を開ける。中には買った覚えのないケーキの箱。無視してミネラルウォーターを取り出すと後ろからヒソカが服の中に手を入れてきた。寝起きながら肘鉄は鳩尾にしっかり決まった。うずくまるヒソカを見下ろしながら水が身体に染み渡り、視界もゆっくりとクリアーになっていくのを感じる。ううん。
「まじカオス。」
夢か。
私の記憶が正しいなら、クロロもシャルもフェイタンもヒソカも某少年漫画に登場する盗賊団のはずだ。完全に寝ぼけている。完全に夢だ。何故ここまでスルー出来たかといえば余りにも非現実的すぎるからだ。
思い切って自分の顔面を叩いてみても悶えるヒソカも勝手に煎餅を食べるフェイタンも消えない。私の意志で終わらせることのできない厄介な夢のようだ。ならばもう一度寝るとしよう。夢の中でも二日酔いだなんて楽しくない。
「あらおはよう、もう昼だけど」
明らかに風呂上がりのパクノダまで現れた。漫画通りのナイスバディを舐めるように見てからおはよう、と返した。
「なんて酷い顔してるの、開いてるから洗ってきたら?」
「やだ、寝る」
「駄目よ」
お母さんか。何で盗賊に心配されなきゃいけないんだあああと思いながら風呂上がりのパクノダの香りを振り払えるはずもなく洗面所に押し込まれた。鏡に映る私は確かに不細工だった。夢の中でくらい超絶美少女でもいいと思うんだけどなあ。
冷たい水で顔を洗うと脳もすっきりしていくのを感じた。気付いた。この感覚は、夢ではないぞ。
「いやいやいやいや!!有り得ない!有り得ないだろあっちゃいけないだろ!逆トリップ!?今更?!そんなん学生時代にしてよ!私社会人だよ!いい年した大人だよ!いたたたたた嘘だあああああ夢だと言ってよジョーーーーーー」
「俺らがここに来て一ヶ月なのに毎朝あれやるのは趣味なのかな」
「あいつなりのストレス発散みたいなものね」
「また叫んでんのか…」
「あ、団長おはよー」