「ソニックから見た私ってどんな感じ?」
「なんだ、突然」
私のベッドをまるで自分のもののように胡座で居座り、物騒な刃物を手入れするソニックに前々から知りたかったことを聞いてみる。
「うーん、なんていうか……こうして喋ってる時の私って私は見れないじゃん。だからどんなのかなーって」
ふと考えたりするものだ。今この瞬間、口を動かし、声を出す己の姿は他者から見てどう移り、どんな印象を残していくのだろうか。
「鏡を見るか動画でも撮ればいい話だろう」
こちらを見向きもせずに返す言葉にまあそうなんだけど、と濁す。
そういうのではなくて、他人からの印象が知りたいだけだ。
だが、まあ。
この男は素直にそんなことを教えてくれるやつでもないことも知っている為、対して期待はしてなかった。
この話題はもう出さないでおこうと内心思いながらもため息を吐き、ベッドを背にしてテレビの電源をつける。
丁度バラエティ番組の再放送がやっていて、見てもいなかったので自然と意識をそちらに向き、次第に他人の印象という話題は頭の隅へと移動しかけていた。
陳腐なネタにけらけらと笑っている時、突如肩に何かが絡まる。
「ぐえ、」
「お前は常にあほ面だ」
首が閉まると文句を言おうとすれば突然の罵倒発言に呆気に取られる。そんなことはお構い無しに彼はテレビに目を向けながらもむにむにと私の顔を弄り、つらつらと言葉を並べる。
「笑うとえくぼができる。まつ毛は少ない。髪は時々絡まっている」
「わ、わるくち?ぐっ」
「唇は柔らかいな」
むに、と彼の指の腹が私の唇を弱く押し、弧を描くように撫でる。
そのまま手は顎をつたい、首を擦られて思わず背筋が震えて鳥肌が立つ。
「首は細い。簡単に絞めることができるぞ、用心しろ」
「ふつう、首絞める人なんかいないから…」
「ふん」
遅れながらも彼なりに自分の印象を伝えようとしているのか。不器用すぎて笑いが込み上げていく。可愛いやつと口にはしないものの、彼の行動に受け入れ、またテレビを眺めようとしたら、
「教えてやっているというのにそっちに目を向けるな」
「いったあ…」
ぐぎ、と首から音が漏れた。
無理やり私の顔を後ろにいるソニックへ向けさせられ、色素の薄い瞳とぱっちり合う。
「やはりあほ面だ」
「…もっと他にないわけ」
「他に?……そうだな、」
くくく、と喉を鳴らす男にむっと眉をひそめて問いかければ、少し考える素振りをすると両頬を手で掴まれ、唇を噛まれた。
何度も軽く歯をたてて噛み、呆然とする私の唇に隙ありと舌が入ってくる。
抵抗しようにも仮にも相手は忍者であり、叶うはずもないので口が離れた時には全身の力は抜け切っていた。
ぺろりと舐め、ソニックは意地の悪い笑みを浮かべていつの間にか自分の目に溜まる雫を掬う。
「お前が俺の事を好きであること、だな」
「…ッ、」
それすらも男の口に含まれ、ぼっと一気に熱くなる私に男はまたニヤリと笑うのだ。
印象:好き