netaのネタから書いたもの。見なくても多分大丈夫
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瞼が重い。

だがそろそろ目を覚まさないとダメだ。

ぎしり、とベッドが軋む音を耳にしながらも重い身体を起こす。
いつも通り、夢の中で学習出来たので目的は達成した。
ぐっと背中を伸ばし、扉に手をかける。


ロビーに荒船達がいればランク戦でもしようかとトリオン体に換装して出入口へと歩いていると珍しい人を発見した。


「ゆうさん」
「…村上か……」


挨拶すると目を擦ってゆうさんも気だるげに返した。

「珍しいな…、ここにいるのは」
「来馬先輩の付き添いです。太一は訓練で今先輩は女子会と言っていました」

喋り終わったあとにはっとする。

言われてもいないのに他のメンバーのことを話してしまった。
少し内心焦ったがゆうさんは特に気にすることもなく、なるほどと相槌を打いてくれる。

自分が言うのもなんだがゆうさんは不思議な雰囲気を持っている。
この人の前だとなんでも話してしまいそうになる。前に荒船や穂刈もそんな事を言っていたのを思い出し、落ち着こうと改めてゆうさんを観察する。
彼女の隣には運搬車に大量のシーツが積まれており、どうやら交換を行っている最中のようだ。
到底ひとりで捌けるような量には思えず、心配になる。

「あの、手伝います」
「…ん?……あー。うん、ありがとう。…今から洗濯しにいくんだ」

ついてきて、と眠たげにからからと運搬車を運んでいくゆうさんの後ろに俺はついていく。
纏めていない髪が揺れ、たまに白い項が見えた。チラリズム的なそれはどうしてもそこに凝視してしまう。

「ゆうさんは、いつもこんな沢山のやつを交換したり洗濯したりしてるんですね」
「んー……、まあこれしかやることないし…」

本部に住み込みだという話を聞いた事があった。
この様子だと殆ど外にも出ていないのだろう。

仕事しかしていないんだなと思うと不安になる。

休憩してますか?と心配になって聞くと寝てる、と欠伸をされた。確かに受付で寝てるのは知ってるがせめてベッドで横になって欲しい。
モヤモヤと心に宿しているとある一室にゆうさんが止まる。

「じゃあ洗濯するから」
「はい」

手伝います、ともう一度言うとうん、と長い前髪の隙間から微笑む顔は緩んでいた。







洗濯をし、それを屋上で乾かしに行ってまた仮眠室まで戻っていき、同じ行為を繰り返す。
エレベーターを使っているからといって随分と移動が多く、並の人間では途中で疲労しているだろうに隣のゆうさんは睡魔と戦いながらも仕事をこなしていた。
初めて彼女の仕事を直で感じることになったが見えぬところでこんなにも働いているなんて驚きだ。

凄いと尊敬してしまう。

おそらく俺だったらひいひいしていたと思う。
自分が今、トリオン体でよかったとほっとしていると慣れた動作でシーツをひくゆうさんと目と合った。

「……休憩するか…」

自分を気づかってくれたのだろう。
すいませんと申し訳なくすると私が疲れたんだよと笑って返してくれる。
受付まで戻ると中まで案内してもらった。椅子に座るよう促され、素直にそうしているとゆうさんは冷蔵庫をゴソゴソと漁っている。

何かの袋を取り出すと二つ、丸いものを取り出して電子レンジへと突っ込んでからくるりとこちらを見る。

「村上、」
「はい」
「村上って……肉まん好きか?」
「え?……はい、好きです」
「そうか」

しん、と静寂が漂う。
どう話題を振ろうにもそれが発展することは彼女には難しいだろう。

どうすることも出来ず、ただ目の前で椅子でくつろぐゆうさんの眼と結び合う。
細目な彼女の瞳は黒く澄んでいる。
じっくりと見られることに不思議に感じたのか、かくんと首を傾げ、髪を垂らして口の端を釣りあげる。

その様子に自然とこちらも口元を緩めてしまい、お互い微笑み合う他人から見れば摩訶不思議な光景が出来上がっていた。

ほのぼのとした雰囲気を打ち消すのは機械的なアラームだ。

先程の電子レンジが鳴っており、ゆうさんは再度立ち上がって中を取り出す。
ほかほか、とした湯気を出して、すんすんといい匂いが鼻の中にはいってくる。
遅めの昼ごはんだろうかと思っているとそれらを紙に包んで、そのひとつをこちらに差し出した。

意図が見えず、困惑した。

「……?」
「…手伝ってくれたお礼だ。肉まんをやる」

なるほど。先程の質問はこれのためか。

素直に頂いて、手の中に肉まんがのる。
熱々でかぷり、と分厚い皮にかぶりつくとジューシーな肉が一緒に口内に入ってくる。

「おいひいです」
「うむ」

労働の後のメシは美味しいからな、と大きく口を開けて肉まんにかぶりつくゆうさんは少し子供っぽい。
彼女の意見にうんうんと頷きながらも黙々と肉まんを味わう。
そういえば、肉まんを久々に食べた気がする。今度は荒船達と食べようか。

きっと今日のように楽しく美味しいんだろう。


大きな口で噛み締め、全てを胃の中にしまい込むと包んでいた紙をまだ食べているゆうさんが取ってゴミ箱へと捨ててくれた。

「ゆうさんは…、最近なにか悩みでもありますか?」

話題のひとつとしてそう尋ねてみるとモゴモゴと口を動かしながらもうーんと考えている。

「なやみ……そうだな、最近ここでセックスしてくる奴が多くて困る」
「ぶっ」

思わぬ単語に椅子からずり落ちしそうになり、寸前のところでとまってほっとした。
俺の様子に気にもしないゆうさんはちびちびと肉まんを噛み付いて話を進める。
表情になんら照れなどなくて、より自分が動揺していたことに羞恥心が覚えていく。

「ただヤるのはいいけど……、後で教えてもらわないと汚れているのに気づかない……悩みだ…」
「そ…れは、大変ですね」

あまり深く考えないでおこう。適当に相槌を打つとそうだろう、とゆうさんは頷く。


「村上もセックスする時はきちんと言うんだぞ」
「……やりませんよ!?」
「ははは」



管理人と村上鋼



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