手のひらの上のしあわせ


「はぁ〜っ…」

フルート、ピッコロ、オーボエでパート練をしている最中、風丸の隣に座っている士郎が大きなため息をついた。こんな大きなため息聞いたことないぞと思った風丸は訳を聞いてみることにした。

「士郎、どうしたんだ?」
「……あのね…」
「うん」
「今日はだめな日なんだ」
「…は?」
「だから、だめな日なんだよ風丸くん」
「…だめな日ってなんだ?」
「うーんとね、どうもやる気が起きなくて、やろうと思っても続かなかったりするんだよ」
「なるほど…」

すると風丸は、あっ、と溢して制服のポケット全てを探る。お目当てのものがあったらしく、明るい表情になった。士郎は小首を傾げる。風丸は両手をグーの形にして、士郎の顔の前に差し出す。

「どーっちだ!」
「えっ?えーっと…」
「いいから!どっちがいい?」
「えっと、じゃあ、こっち」
「はい、やるよ!」

風丸は指されたほうの手を開き、手で握っていたものを渡した。士郎の手のひらにはピンクの包みに包まれているキャンディがコロンと転がっていた。

「わぁっ」

士郎の頬は思わず緩んだ。つられて風丸も優しく笑う。

「それなめて残り頑張れよ」
「ありがとう!」
「どういたしまして。後でちゃんと口ゆすいでくるんだぞ?」
「はぁーい!」

実は士郎がどちらの手を選んでもいいように、両方の手にキャンディは入っていたのだ。

(間もなくその話を聞きつけたアツヤがオレにもくれ!と楽器片手に飛んで来たのはまた別のお話。)





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ハリケーンの日おめでとう!ま、間に合った…!どこまでもお母さんな風丸が好きです


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