いつも思うんだ。
彼女はなんで俺が好きなのか。
藤野さんの周りには南雲と涼野をはじめに仲のいい男友達は沢山いる。
悪くも言ってしまえば選り取り見取りというやつだ。
その中には藤野さんに好意を寄せてる者もいるはず。
性格もいいし、クラスの中心的存在。
そんな彼女から好意を寄せられることが不思議で仕方がない。
「なんで今さら本気になったんだろ」
「卒業近いからでしょ」
「ヒロト、」
「卒業したら先生と生徒じゃなくなるからね」
確かにいう通りで、今月いっぱいは在校生だがそれを過ぎてしまえば教師と生徒という関係がなくなる事になる。
年齢の壁はあるかもしれないが、それほど離れているというわけでもない。
「緑川はどうなの?」
「…初めはなんとも思ってなかった」
「へえ」
「でも、宣言されて、看病されて、意識してみたら目が離せなくて」
「今まで意識してなかったんだ」
「そりゃあね」
あくまでも彼女は生徒、俺は教師。
それを一女性と見てしまうことは出来ないのが普通だ。
「あ、藤野さん」
ふと窓の外を見れば校内に入ろうとする藤野さんと目があう。
ニコッと笑いながら大きく手を振る藤野さんについ頬が緩んだ。
自分の表情に気付いて、目をそらすと隣からぷっと笑い声が聞こえてくる。
「好きなんだね」
「…否定できない」
意識し始めたのは宣言されてからだった。
分からなくなったのは看病された一昨日だった。
好きなのかも知れないと思ったのはお昼を一緒にした昨日だった。
好きだと確信したのはたった今。
たった4日間で彼女に対する気持ちはかなり変わっていて。
どうやら彼女には特別ななにかがあるらしい。
まさかこうも気になる、いや、好きになるとは誰が思っただろうか。
「明日、か…」
明日で全てが終わる。
「オレから言うべき…だよな」
「ヘタレてるね、相変わらず」
「うるさい」
「痛い」
ニヤついてうざいヒロトの頭を殴って、ため息を吐く。
どうしよう。
口に出してしまえば小さくとも大きくとも不安しか生まれてこなかった。
4日目
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