「リュウジせんせっ!!」


朝から元気がいいね、
とリュウジは隣に並んだ紫苑を見た。


「おはよ!」
「おはよう、藤野さん。今日は早いんだね」
「なんとなく先生に会える気がして早く出てきた!」


そしたら本当に会えたのか。
凄いとしか言えなかった。


「ごほっ、」


熱とだるさが抜けた体には咳だけはしっかりと残っていた。


「先生、無理してない?」
「なにが?」
「体調悪かったでしょ」
「あぁ、もう大丈夫。
まだ咳は残ってるけどね」


そっか、
紫苑の相づちに
なにか暗いものを感じて不思議に思う。
なぜ暗くなる必要があるのだろうか。
好きな相手の体調が悪ければ心配するのは当たり前だが、ここまでなるのはどうも分からない。

「藤野さんが気にやむことじゃないよ」
「そうみえる?」
「いつもより暗い」
「だって、あたしのせいかなって思うじゃん」

いつも明るい彼女がこんなに暗い表情も出来るのか。
変なところに感心していると間に何かが入り込んだ。「紫苑、おはよう」
「はよ」
「風介に晴矢!おはよ!」

晴矢と風介が邪魔をするように紫苑との間に割り込んだのだ。

「(な、なんか南雲と涼野の視線が…)」

2人は紫苑に普通に話しながらも視線は鋭く、睨むかのごとくリュウジを見ていた。
それもそのはず。
紫苑と晴矢、風介の3人は幼なじみ。
幼なじみをとられるかもしれないという気持ちは拭えないのだ。

「晴矢に風介さ、リュウジ先生のこと睨まないでよ」
「「無理」」
「ったく…あれか。嫌よ嫌よもなんとかってやつか」
「嫌よ嫌よも好きのうち、ね」
「それ!」
「「違う!」」

必死に否定する2人にリュウジは苦笑を浮かべる。
そこまで嫌われるとさすがに人として悲しくなる。
仕方のないことだとしてもだ。

「(ああ、そうだ…)」

ふと思い出した今日の日付。
このやりとりもあと3日しか見ることは出来ないのだ。
そう思えば2人に嫌われていても寂しくもあった。

「せんせ」

感傷に浸りきる前に呼び止められる。
目の前に飛び込んできたのは不思議そうな紫苑の顔。

「今日お昼ご飯一緒に食べようよ!」
「「ダメだ」」
「なんで2人が答えるわけ!」



結局、南雲と涼野はサッカー部の集まりで一緒に食べることは難しくて。
悔しがる二人を尻目に薄い優越感に浸れたのは、もしかしたら俺のなかで何かがかわり始めたのかもしれない。





3日目


prev - next

back



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -