「緑川ね、今日はおやすみなんだ」


突然現れたヒロト先生はこれまた突然そんな事を言った。


「昨日の帰りから体調悪そうでしたからね」
「よく見てるね」


リュウジ先生のこと大好きなので。
こんなテンプレはもう言わなくてもヒロト先生は分かってると思う。
いや、分かってる。
だってわたしが3年間想い続けたリュウジ先生の近くで、いつもこの人は面白そうに見ていたから。


「明日は来るみたいだけど今日お見舞いに行ったら?」
「もちろん」


はい、と手渡される家の鍵と簡易的な地図。
面白いことが好きなヒロト先生は協力してくれるのは予想の範囲内。
リュウジ先生を落とすうえでヒロト先生は重要なサブキャラだ。
…うん。サブキャラ。
極めてサブだな。

(ってか、教えてもらわなくても愛の力で家分かるんだけどな)





「紫苑ー今日ミスド寄ろうぜ」
「ごめん晴矢!リュウジ先生がわたしを待ってる!」
「…待ってないと思うぞ」


晴矢の誘いは残念だけど断ってリュウジ先生の家に全速力で向かう。
風介の言葉は聞こえないフリだ。


途中でコンビニに寄ったけどそこまで時間がかかる訳ではなく、学校から15分くらい離れた場所に先生の家はあった。
中々大きいマンション。
さすが安定した給料を渡されているだけある。
渡された鍵でエントランス、そして家の扉を開ける。
すぐに咳が聞こえてきて、部屋の場所が分かった。
軽く三回程度ノック。


「ヒロト…?」
「ううん、藤野だよ」


ドタドタ…バタッ
随分と慌てた足音。


「なんで藤野さんが…っ!!」


急に動いたからか先生は咳をしながらふらっとよろめいた。
倒れそうになった先生をとっさに受け止め壁にもたれかかる。
まあ、なんでもたれかかったかっていうと、身長差のある先生をわたし1人の力では受け止められないから。


「熱はないみたいだね。ほら、早く寝て」


今日はガチなんだから。
怒った様に言ってやれば大人しくベッドに戻ってくれた。




(ごめんね先生、わたしのせいで疲れちゃったよね)

眠りに落ちる意識の底で藤野さんの辛そうな声が聞こえた


2日目


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