4. [ 23/24 ]
「おーい、財前&ラブルスー、次こそはちゃんとダブルスすんでー」
謙也先輩が大きく手を降っている。どうやら回復もスピードスターらしい。
「光きゅん、行くわよ〜」
小春先輩と一氏先輩は肩を組んでやる気満々のようである。
「…めんど」
それとは逆に光は凄く面倒臭そうに言う。
ベンチから腰を上げるつもりもなさそうだ。
「光きゅん、ぜんざいちゃんと一緒にいたい気持ちも解るけど、カッコええ姿、見せたくなぁ〜い?」
ニヤリと小春先輩が挑発的に言うと、「…部活やからしゃあなく行くだけっすから。別に小春先輩が言うたからちゃうし。」とツンデレ台詞を言ってベンチから立ち上がり、コートへ向かっていった。ツンデレめ。
『光!』
「?」
『が、頑張ってね!応援してる、から!』
「…おん」
さっきまで無表情だったのに、口元に弧を描きフッと不敵に笑ってまた行ってしまった。
コートへ向ったものの、何やら話し合いをしているらしく、ジャージを弄んでみる。
光と比べると背の小さい私が着るとぶかぶかで袖がかなり余る。
先輩達と一緒にいると小さく見えてしまう光も、やっぱり男の子なんだなぁと実感する。
それに微かに光の匂いがして「まるで光に抱き締められてるみたーい」
『ちょ、一氏先輩!?』
「なんや?当たりか?」
『ち、ちがっ…
というか、もう私の声もモノマネできるようになったんですか!?』
「それ位当たり前やろ。何たってモノマネ王子やからな!モノマネ会のトップや!」
モノマネ王子の由来はそうじゃなくて、かっこいい意味で王子、なんだと思う。
小春小春言ってるけれど、つり目で鼻も高くてカッコいいし。意外とファンが多いのを私は知っている。
まあそんなこと言った所で彼は小春先輩一筋なのだからそんなもの何の価値も無いのだろうけど。
『流石ですね!
…というかどうしてここへ?試合なんじゃ…』
「あー、小道具取りに来たねん。」
『練習なのに本格的なんですね!』
「まあ、小道具はたまにしか使わへんのやけど、今日は客が居るからな、特別や。」
客…って、それってもしかしなくても、
『ありがとうございます。』
「礼なら光に言い。」
『?』
「あいつがな、俺らに依頼したねん。「ぜんざいが先輩らのファンなんで、公式試合の時みたいにやってください」てな。」
光のモノマネも上手いなぁー、じゃなくて、
『光が…?』
「おん。あいつ、クールやから俺らのお笑いテニスとかあんま笑わへんし無意味なんやけど、お前が居るからやろな。」
どんどん嬉しさが溢れてきてジャージをきゅっと掴む。
「ほな行くわ。しっかり見とき」
後ろ手で手を振ると「こーはるぅー」と走って行ってしまった。
"しっかり見とき"
それはお笑いテニスの事だろうか、それとも…
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