3. [ 19/24 ]

同時刻、テニスコート


「財前、自分今日どないしたん、全然打てとらんやんか」

「はい…」

「何や、いつもの毒舌もあらへんし…ちょお休憩してき」

「…っす」

頭を下げて部室へ歩くいていく。
鞄を漁ってタオルを被り近くにあるパイプイスに力無く座る。

「ハァ…何であんなこと言ってしもたんや」


折角好きだと気付いたのに。
怯えたぜんざいの表情が頭から離れへん


「どないしよ…」


〜♪

「!?」


ふと何処からか歌声が聴こえる。

この曲は俺が数日前に上げたあの曲。
それを苦しそうに歌うこの声は

「ぴんく…?」

俺はそのまま部室から飛び出した
部長や謙也さんが何か言ってるが構ってられへん。

「何処や…っ」

校舎に入り、歌声を頼りに階段を数段飛ばして駆け上がる。

持ってる体力を全部使い切るように思い切り地面を蹴り上げる。
速く、速く。


「ハァ…ハアッ…」

本当は心のどこかで解っていたのかもしれない。
いや、解っていたのだろう。
歌声だけを頼りにしていたらこんなに早く辿り着けなかっただろう。
なのに俺の足は迷う事なく此処に向かっていたのだから。

この、俺"達"の教室に。


そう、きっと解っていたんだ

ガラッ

『♪〜』

ぜんざいがぴんくだということを。



「ぜんざい」

『!ひか、る』


振り向いたぜんざいの瞳からは涙が伝っていて、柄にもなく綺麗だと思ってしまった。
そのまま近づいて身体の動くままに抱き締めるとぜんざいは微かに震えていた。


「ぜんざい、また泣かせてもうたな…すまん。

お前がぴんくやったんやな」

『私も…ごめん、っ、ずっと、言えなかっ…
怖かった、の、
ぜんざいPに幻滅されたら…嫌われ、た、らっ』

「あほ…嫌うわけないやろ。寧ろ嬉しいわ、
好きな奴が嫁なんやから」

『へ…?』

「好きや…"お前"が。」

『わ、たし、も、"あなた"が好き、っ』

「やっと目ぇ合わせてくれたな」

久しぶりに合った目は少し潤んでいるがとても愛しかった。



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