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うぽつー
バラードktkr右から左に流れるコメントに目を通す。
やはりその中でも多いのが
"ぴんくへのラブソング"
"公式夫婦"
というコメント。
昨日家に帰ると曲が浮かんだから慌てて譜面に起こすと俺らしくもないバラード曲やった。
詩もスラスラと頭に浮かんだフレーズをそのまま書いた。
出来上がったものを見直すと自分で書いたにも関わらずなぜこんな曲になったのか不思議やった。
俺は一体誰に向けてこの曲を創ったのだろう。
ぴんく?ぜんざい?
恐らく両方だろう。
両方に向けて書いたのにあまり矛盾している所はなかった。
まるで2人が同じ存在であるかのように。
「…もしかしたらぜんざいとぴんくはー」
何を考えているのだろうか。ぜんざいは何もやっていないと言ったのに。
もしそうだとしたら隠す理由なんて無いんやから。
そうならよかったのに、と何処かで期待していた。
*****
「はよ」
『あ、おはよう…』
曲を上げてから数日、明らかにぜんざいがおかしい。
俺を避けてる気がする。
「ぜんざい」
『あ、わたし紅亜に呼ばれてるから…』
ほら、また逃げようとする。
「ちょっと来い」
『わっ…』
腕を引いて教師から抜け出す。
チャイムが鳴ったがそんなん気にしてられへん。
屋上の扉を開きぜんざいと向かい合う。
「なあ、何で避けるん?」
『避けてなんかないよ〜』
「嘘吐くなや。何やねんその顔」
『えっ…』
「お前が俺の表情がわかるんと同じように俺にもわかんねん。
作り笑いなんかすんなや。」
ぜんざいは驚いたように目を見開くと、作り笑いが消えた。
ちゃうねん。俺はぜんざいにいつもみたく笑って欲しいだけやねん。
「なあ、ちゃんと言うてや」
『だから何でもないってば』
「じゃあなんで俺の方見いひんねん!」
柄にもなく大声を出してしまった。
ぜんざいも怯えたように身を縮こまらせた。
「…もうええ。勝手にしいや。」
俺は身を翻して怯えるぜんざいを置いて屋上から出て行った。
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