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俺はほんまに何がしたいんや。


泣きそうなしらたまの腕を半ば無理矢理引いて来たのは行きつけの甘味処。

1番手前の個室で向かい合わせに座る。



「…しらたま」

『…』

「すまんかった」

とりあえず謝罪をしないと。そう思い口を開く。

暫く口さっき走ったから口が乾いていたからだろうか、それとも別の理由があるからか、声が少しだけ震えていた。



『…財前はわるくない、よ。』

「せやけど」

『だって本当のことだし。
私こそ空気悪くしちゃってごめんね。』

「自分はなんも悪くあらへんのやから謝んなや」

立ち上がってしらたまと隣に座る。
2人用で向かい合わせに座るようになるように作られた席は座りづらいが何となくそうしたい気分だった。
教室と同じように俺の左側にしらたまがくるように座るといつもより近いはずが距離があるように感じてしまう。


ヴヴヴ

ポケットの携帯が震えた。
さっきまで学校に居ったからマナーモードのままや。
こんな時に誰かと開くと部長からだった。
しらたまのこともあるし、部活もサボってもうたから説教だろうかと思っていたが違った。


"嫉妬するんも分かるけど優しくせなアカンで。"

たった一文21文字のメールは長ったらしい説教よりも心を貫いた。


ーーーそうか、俺は嫉妬してたんや。
気軽に名前を呼べる部長に。
名前で呼んでもらえる謙也さんに。

気付かへんなんてアホやな。


「…ぜんざい」


『えっ…?』

初めて下の名前で呼ぶとしらたま…ぜんざいは目を大きく開いてこっちを見た。

『今、ぜんざいって…』

「アカン?」

『ううん。』

「光」

『へ?』

「光って呼びや。」

『ひ、ひかる…』

「ん、ようできました。
ご褒美に白玉善哉奢ったるわ」

『なんで白玉善哉一択!?』

「すんませーん、白玉善哉2つ」

『ちょっと聞いてる!?』

「うっさいわ」



「白玉善哉2つお持ちしました〜」

『あ、ありがとうございます』

「どうも」

『美味しそう…いただきまーす』

携帯を操作してポケットにしまい、食べ始める。

『ん!おいしー』

「せやろ?ここの白玉善哉がいっちゃんうまいねん。」

『白玉がもちもちしてるー』

「お前のほっぺみたいやな」

『うるさいっ!ぜんざいみたいな名前してー』



やっぱ俺、ぜんざいが好きなんや。




*****


ヴヴ

「お、メール。財前からや」

「さっきの返事か?何て書いてあるん?」

「クスッ…ほれ」

「なになに…"余計なお世話っすわ。"
可愛くないやっちゃなー」





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