7.二度目の、お別れ

そしてその日が来た。見送りたい、せめて1分1秒でも巻島くんの近くにいたかった。朝から気分は憂鬱でひどい顔してて…。これじゃだめだなんて気合い注入しましたよ、えぇ。彼はそんなことしてるなんて知らないし思いもしないだろうなぁって、四六時中巻島くんの事ばかり考えてる気がする。

「よう。どうした? ちょっと見てない間に痩せたかぁ?」

開口一番これである。たしかに食事は喉を通らなかったけど、鏡見たときはけっこう取り繕えてたと思ってたのになぁ。巻島くんの小さな気遣いというか些細なことにも気づいてくれたことがなんだかとても嬉しくて、もっと違う日にそれやってほしかったなぁ、なんて笑っちゃった。

「そうやって笑ってろ。その方がなまえには似合ってるッショ」

ぽんぽんと頭を撫でられる。あぁこの手に触れられるのももう暫くはないのか…。

寂しい、そう口から零れそうになって慌てて唇を噛みしめる。今そんなこと言っても巻島くんを困らせるだけだから。

「次の帰省、目処がついたらまた連絡するッショ」
「うん…」
「そんな顔すんなッショ…… いや、わりぃ。させてんのは俺だよな…」

刻々と時間は過ぎていく。やっぱり最後まで沈黙が出来ちゃうんだよね、私たち。いつもは嫌いじゃないけど今日はやだな…

「巻島くん、あのね」
「何ッショ」
「私は巻島くんが好き」
「知ってるッショ。俺も好きだ」
「私、たぶん巻島くんが思ってる以上に嫉妬するよ…? 金髪のお姉さんとイチャイチャしないでーって」
「クハッ、んなことしねぇッショ。俺にはなまえがいる」
「私…、寂しがり屋だよ…? すぐ泣くよ…? 無駄にLINEとか、電話も、時間合えばする、かもしれないよ…? それでも、ずっと、巻島くんのこと待ってても、いいの…?」
「お前が泣き虫なのくらい知ってるッショ。お前の方こそいつ帰ってくるかわかんねぇ男待ってていいのか?」
「うん… 待ってていいなら、喜んでいつまでも待つよ」
「クハッ、お前変わってるな。いつになるかわかんねぇけど必ず迎えにいくッショ。だから、待っててくれ」

涙で視界を霞ませる私をぎゅっと抱きしめ、触れるだけのキスをする。待ってる、と涙声で伝えると彼は、いい子だと笑う。涙を拭い、私も精一杯の笑顔をつくる。

「いってらっしゃい、裕介くん」


(二度目の、お別れ)


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