6.畏れていたきざし
数日後、また彼からLINEが来た。
今度はこの前みたいに楽しい気持ちにはなれなかった。
"来週イギリスに帰ることになった"
言っとかなきゃいけないと思ったから。だから連絡した、と。
いつかは来るとわかっていた。でも、やっぱりこうやって言われると、分かってても寂しいよ… もっとずっと貴方と一緒にいたかったなぁ。
短い返事を返し、布団に突っ伏す。目からはボロボロと涙がこぼれ枕を濡らしていく。涙は留まることも知らずに流れ続けるし、枕は冷たくなっていくしでなんだかもう…。
巻島くんは寂しいって思ってくれるかな。また会いに来るって嘘でもいいから言ってくれるかな。むしろ私が会いに行けばいいのかな。次から次へと涙と共に疑問が溢れる。外国の女の人に誘惑されて捨てられちゃったらどうしよう。もう日本には帰らないって言われたらどうしよう。別れようって言われたら、どうしよう。どんなに悩んでも答えは出ない。
あぁ、だめだ。もう寝てしまおう。冷たくなってしまった枕は裏返し、ぎゅと布団を握りしめて目を瞑る。ぐるぐると渦巻く嫌な想像が早くなくなりますように。こんな日に限って睡魔ってやつはやってこない。全くもう。巻島くんもの幸せな日々を思い返す。ああ、だめだ。また涙が出そうになる。
結局ぐるぐると渦巻いた嫌な想像とこの感情は睡魔を遠ざけてしまい眠ることは叶わなかった。
(畏れていたきざし)