3.バーカ
想い人は今なにを口にしたのだろう。好きだ…? 誰を…? 私を…? 目が点になって固まっていると彼が苦笑しながら手を振ってくる。
「おーい、みょうじ? 大丈夫かー?」
好きだなんて言ってたくせに私なんかよりも全然平然としてる彼はなんて強いんだろう。はい! と返事をするといつもの笑顔を見せられてまた胸が苦しくなった。
「あの、私、えっとなんて言ったらいいかその」
動揺でうまく言葉が出てこない。スカートの裾をぎゅっと握り言葉を探す。
「あぁ、わりぃ。急すぎるよな」
気恥しそうに頬をかく彼に私もいつもより不格好な笑いで応える。
「手嶋くんはさ、」
「ん?」
「手嶋くんは、ずっと岩瀬さんのことが好きなんだと思ってた」
「あぁ、それはそのなんていうか」
言葉を濁すあたり、やっぱり好きだったのだろう。振られでもしたのかな? それで私のとこに来たの? なんて嫌な想像をしてしまう。深く息を吐き、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「私ね。手嶋くんのこと、好き、だよ」
ずっと貴方だけを見てきたつもりだったんだよ。知らないよね。そんなに驚いた顔しないでよ。
「ずっと、ずっと好きだったよ」
そう伝えると、彼の顔は真っ赤に染まり、それを見て私の頬もこれでもかってくらい赤く染まった。
「私と、付き合ってもらえますか?」
「バーカ、そういうのは男に言わせろよ」