サイドカー



肌寒さがひしひしと伝わる風吹く季節が今年もやってくる。あぁ、クリスマスもひとりで過ごすのかななんて寂しいことを考えてしまう。スーパーでの買い物を終えると寒そうに外で立っている黒髪の彼。荒北もクリスマスはひとりなのかな、あ、いや荒北には部活があるのか。

「荷物、持つよォ」
「ありがとう」

スーパーから家まではそんなに離れてない。静かに歩く彼の後ろをついて歩き家まで向かう。寒い寒いと部屋に入り暖房をつけ二人して炬燵へと潜り込む。早々にアルコールの缶を開け乾杯と缶を鳴らす。他愛ない話をしながらテレビを見る。テレビの中はというか世間はもうクリスマス一色でサンタさんだったりおもちゃ屋さんのCMが頻繁に流れる。

「荒北クリスマスって何するの?」
「知らねェ。チャリ乗ってー…あーいつもと一緒だなァ。そういうなまえチャンはァ?」
「私もいつも通りかな。特に何か予定も入ってないし」
「ンじゃァ俺と一緒に過ごすゥ?」

思わぬ言葉にドキリと胸がなる。普段と何も変わらないはずなのにクリスマスってだけで胸がなるのは何故だろう。いつもと一緒、いつもと一緒と言い聞かせ、うんと頷くと彼は嬉しそうに目を細める。

「ケンタ買いに行かねェとなァ。この辺あったっけェ」
「クリスマスはケンタッキーなんだ。この辺だと…あー隣の駅前にしかないかも」
「まじか。まァ隣駅なら余裕で行けるかァ」

着々と計画が進んでいく。クリスマスまであと数日。叶うことなら来年も再来年も共に過ごしたいなんてワガママは今はまだ心の奥に。

クリスマス当日、ケンタッキーの箱を抱えて帰ってくる荒北を勢いで静岡まで来た東堂、新開、福ちゃんと迎えるのはまた別の話。





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