背中に微かな温もりと、限りない重みを感じる。

腹の辺りにはガッチリと腕が回されていて、随分懐かれたもんだなと、半ば呆れている。

俺は書類から目を離す事なく、背後の人間に体重を預けた。


(横抱き、か…)


かつて、この両腕に抱き上げられた事があった。

それも軽がるとだ。


もし逆に、俺がこいつを横抱きするとなると…
俺には無理だ。

それだけ、この男と俺の体格差は歴然だった。


「無駄に、でけぇんだよ」


だから今現在、自分はこの巨体を退かせないのだ。


(居心地が良いなんて、微塵も思ってたまるか)


男として悔しいが、どうにも出来ない事なのだから、抵抗しても仕方がない。


「バカ遥」


悪態を一つ吐いた俺は、書類を脇に置き目を閉じた。







end.



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