すっかり聞き慣れてしまった声の主は俺の目の前にたんまりと置いてある書類の山が目に入らないらしい。
一緒に話そう、だ?そんな事してる暇なんざねーんだよ、そこに座りながら俺をこれでもかと睨み付けてくる奴等のせいで。後誰が名前で呼んで良いなんて許可出しやがったんだ、馴れ馴れしくすんな不愉快だ。
そんな思いも込めつつギロリと一睨みしてやっても、空気の読めない馬鹿猿は一人で居るの寂しいだろ?だなんて検討外れの言葉をかけてきやがった。
おーおーお優しいこって。
仲間外れにされてる奴は放っておけない、ってか?
誰に向かって口きいてやがんだこいつは。猿に同情される程落ちぶれたつもりはねぇぞ。
なんて事を一人で毒づいていたら、役員共が未だこちらに睨みをきかせつつ転校生の意識を戻そうとしていた。
「楓、別に会長に気を遣う必要は無いんですよ。彼は一人が好きですから」
「「そーだよー、会長なんて放って僕達とあそぼー?」」
「なっ、お前らそういう事言うなよ!皆仲良くすんのが一番だろ!」
「アハハ、楓ちゃんは優しいね〜」
………。…付き合ってらんねぇ。
軽い溜め息をつきつつ(地獄耳の副会長に思いっきり睨まれた)仕事に戻ろうとすれば、再び転校生が今度は立ち上がり俺の目の前に立った。
視界に入るな、鬱陶しい。

「なぁって!何で無視するんだよ?お前いつも仕事ばっか―――」
「うるせぇ」

顔を覗き込んでくる相手に冷たくそう吐き捨てれば、奴は息を飲んだ。これ以上は我慢の限界だった。
仕事が溜まっていくのはこいつのせいじゃない、…せいではないが、煩くされるのには耐えられない。
書類にサインを書き込む作業をいったん止めて、俺は立花を真っ向から見据えた。

「良いか、俺にはこの仕事を終わらせなきゃならねぇ義務があるんだ。
そこの役に立たねぇ奴等が仕事を放棄してるせいで溜まっていく一方なんだよ、分かるか?そんな時にテメェとお喋りなんざしてられっか。
そもそもここはお前みたいなのが居ていい場所じゃあねぇんだよ、それを何だ?人の仕事の邪魔をしてるとは思わねぇのか?
分かったらさっさとこの場から立ち去るかその開きっぱなしの口を閉じろ。迷惑なんだよ」

言いたい事を一気に言い終えた後、俺は再び書類に目を戻した。我ながら少々キツい言い方をしたとは思ったが、こうでも言わなきゃ猿には理解出来ねぇだろうと考慮しての事だ。
立花は口をつぐんだまま、その場に立ち尽くしている。正直邪魔。

「っちょっと聞き捨てなりませんね、楓は貴方を心配して――」
「黙れ、お前に何か言える権利があるのか?ゴタゴタと理屈をこねる前にテメェの仕事をやれ、誰のせいでこんな状態になってると思ってんだ」
「「うわ〜会長責任転嫁じゃん、サイッテー」」

肩を怒らせて立ち上がった副会長に鋭い声を飛ばせば、双子の嘲笑が混じった言葉が返ってきた。まさかこの二人に俺がそんな事を言われるとはな…怒りを通り越していっその事笑える。
俺に突き刺さる視線と未だ続く罵倒の言葉を軽く無視して仕事に戻ろうとすれば、何だか泣きそうな声がすぐ前から聞こえた。




「っやめろよお前ら!!わ、悪いのは俺だから…ッ」





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