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「あれ、生徒会長様だ。何でこんな所に……ハッ!!まさかの平凡総受王道展開が今更きたのか!?まぁ俺腐男子じゃねーから萌えねーけどな!!!残念!!!俺の嫁はミカたんただ一人ですハァハァ!!!」
「本当にうっせぇな、ちょっとは黙ってらんねーのかよ。テメェのフィギュア全部薙ぎ倒すぞこのオタクが」
「な…何ィ一輝俺の嫁達を凌辱する気か畜生!!!こんの変態g」
「テメェが一番の変態だわカスがァアァァ!!!!!」

「…で、会長さん、どうしたんすか」

真後ろで繰り広げられるドツキ漫才をそれはそれは華麗にスルーしながら、宮村は俺にそう尋ねてきた。…日常茶飯事なんだろうか。
俺としては物凄く気が散るんだがとりあえずは後ろの二人を無理矢理無視する事に決め、話をしようと口を開く。が、俺は先程から何となく違和感を感じていた。
目の前の男の、雰囲気。会った瞬間から一貫してユルユルとした態度だが、何だかそれが、…まるで。
試しにと彼の名前を呼んでみる。

「………宮村」
「はい?」

…まただ。この違和感。間違いない。
俺は確信を持って頷き、不思議そうな顔をしている彼に向かって口を開いた。



「宮村、まさかお前……ダブりか?」



――相手は俺の言葉にゆるく目を瞬かせると、次いで何故だか苦笑いの様な笑みを浮かべた。後ろで乱闘していた二人も俺の言葉に反応し、何故だか白い目で見てくる。…おい、何なんだ。

「当たり。俺、留年してんだ、中二から。って言うか一年の時会長と一緒のクラスだったんだけど」
「は……、っはァッ!!??」
自分を指差しながら眉尻を下げて笑いつつ、砕けた口調になった相手の発言に一瞬固まる。衝撃の新事実に言葉も出なかった。宮村と同じクラスだっただと!?全く記憶に無いってのはどういう事なんだ!
脳内を必死でフル回転して中一の時の記憶を探ってみるが、…宮村陽介…宮村…み、やむら……?
「いーよ別に、無理に思い出さなくても。俺よく言われんだ、影薄いって。目立たなくて済むから都合良いんだけどさ」
「…わ……悪ィ…」
「はは、会長が俺に謝ってるとか変な感じ」
笑いながらそう言う宮村に若干救われるが、普通怒るだろう自分の存在を完璧に消去されていたら。俺だったら相手が思い出すまで脳に衝撃を与える。
自分の記憶力に自信はあったが、彼はそれを上回る程の忍者的素質を持っているらしい。一人ある意味才能だと頷いていた時、…俺はふと気が付いた。
俺と同じクラスだったと言う事は、宮村は中一の時はA組に居たという事だ。が、今は立花と同じF組。学校側によっぽどの迷惑を掛けなければ、ここまでのクラス落ちはあり得ない。そしてそんな大問題が起こったなら、必ず噂が広まる筈だ。

(……どういう事だ?)

怪訝気に彼にちらと目線をやれば、宮村は俺の言いたい事が分かっているのかいないのか、タラタラと座りながら発言を待っている。…深入りはしない事にするか。
とりあえずその事は横に置いておき虐めの事について聞こうと口を開いた瞬間、横から冷めた声が聞こえてきた。

「どうせどっからか嗅ぎ付けて、陽介を利用しようとか考えてんだろ。生徒会なんてろくな事考えねぇもんな」
「………利用?」

俺は思わず顔をしかめて、口を挟んできた原田の方を見やった。こいつを何にどう利用しろって言うんだ。
タコ殴りにされたのか顔が悲惨な事になっている前田の髪の毛をひっつかみながら、俺を睨み付ける様に見てくる原田。明らかな敵意の目。だが、他の生徒や東條の様なねちっこい感情が含まれていないその目には、何故だか好感が持てた。
こいつは多分、俺をどうこう思っていると言うよりも宮村を大切にしているだけなんだろう。当の本人は「そーいう事言うなって」とか言いつつ欠伸を噛み殺してるが。やっぱりよく分からねぇ奴だ。
とりあえず利用出来るんだか何だか知らないが、宮村はやはり一般人とは違うらしい。が、正直今のところ余り興味はない。
誤解されたままじゃあ気分が悪い為、俺は髪を掻き上げながら溜め息混じりに口を開いた。

「…何の話してんのかは知らねぇが、俺は虐めの被害者である宮村陽介にその話を聞きに来ただけだ。それ以外は知らねぇよ」
「いじめ?」
「…は?……アンタ、それを聞きに来ただけなのか?」
「あ?何か文句あんのか」

面食らった様に俺に聞く原田に頷けば、文句はねぇけど、とか何とかぼそぼそ言いながら押し黙る。
宮村はと言うと、俺の言葉に目をぱちくりと不思議そうに瞬かせた後しばらく首を傾げながら考え、最終的に眉間に皺を寄せながら後ろの二人を振り返った。



「なぁ、俺虐められてんの?」



宮村陽介は俺の想像を遥かに越えた、超大物の様だった。





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