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とりあえず鬼嶋の件はそれで一旦終わるとして、俺達は未だ気絶している強姦魔共を見下ろしながらさてどうするかと思案し始めた。南がいつもは決して見せない冷めた目線で奴等を眺めながら、口を開く。
「……別に、何の役にも立たねぇし全裸で校庭のど真ん中に放置しておけば良いんじゃねぇのか」
「誰が脱がすんだ誰が。却下」
「そこか。そこなのか?」
自分がこいつらの服を下まで脱がす様を想像してしまい、俺はげんなりした。そこしかねぇだろ。
と言うより、いつも菩薩みたいに優しい…いや、そこまでじゃないがとりあえず温厚な南がこうまで言うなんて、こいつらは残りの人生を一生怯えながら暮らさなきゃならねぇな。鬼嶋にもボロクソにやられて、つくづくこの3人は散々な目にあっている。
本当なら万死に値するが、…その不憫さに、今回は免じてやるか。

「鬼嶋、そいつら起こせ」
「………」

俺の言葉に無言で顔を上げ、鬼嶋は俺の指し示した方向に目をやった。次いで、そう言えば居たなみたいな顔をする。いや、伸した事位は覚えておいてやれよ。
何も言わないまま奴等に近寄り、その側で腰を下ろす。一人の胸ぐらを掴んで無理矢理顔を上げさせたと思えば、次の瞬間には強烈な平手打ちがバシーンッ!と小気味の良い音をたてて炸裂した。…おい、誰が止めを刺せって言ったんだ。
往復ビンタの様にバシンバシンと叩き続ける鬼嶋を止めるべきかと一瞬悩んだが、とりあえず激しい頬への痛みに彼等は目を覚ましたらしく、のっそりと起き上がりふらふらと焦点の定まらない目で部屋を見回していた。両の頬が可哀想な位に真っ赤に腫れている。
と、鬼嶋に気付いた瞬間三人が三人共叫び声を上げ、ガタガタ震えだした。…こいつらに何やったんだ、鬼嶋。
とりあえずパニック状態の奴等の前に話をしようと仁王立ちになれば、三人は一瞬呆けた顔をして俺を見上げた後――物凄い勢いで、土下座をした。

「すすすすいません!!!ごめんなさいっもうしません俺達はただた、頼まれて……ッ、ほ、本当に、すいませえええん!!!!」
「い、命だけは……命だけは、お助けをォッ」
「何でもしますっ!!!ごめんなさいすいません生きててすいません!!俺は人間の屑ですごめんなさい許して下さい!!!」
「………」

……本当に、何をしたんだ、鬼嶋。
先程俺を襲った時とは打って変わってぶるぶる震えながら頭を地に押し付けている三人に俺は溜め息をつき、腰を下ろした。そうして、低めの声で静かに問う。
「――もう二度と、俺に逆らわないと誓えるか?」
「!!ちっ…誓います、すいません、すいません…!」
「謝罪はもういい、うぜぇ。良いか、俺はあの出来事を脳内から消し去りたい。だからお前達三人は誰にも言うな、忘れろ、今後俺に近寄るな。……それを破ったら、」

一旦言葉を切り、俺は意味ありげに鬼嶋の方をちらりと見た。瞬間、三人の顔が蒼白になる。当の本人は全く分かっていない様な顔をしていたが、これで十分牽制になるだろう。

再び三人に目をやり口端を上げると、俺は言った。


「―――分かってるな?」


一瞬の間の後、青い顔のまま首を千切れんばかりにぶんぶんと上下に振りまくる三人になら行け、と短く吐き捨て立ち上がれば、彼等は数秒躊躇した後のたのたと立ち上がり生徒会室から逃げる様に出ていった。一人を南が足を掛けて転ばせていたが。

「良かったのかよ、恭夜。あんなに甘くて」
「あの様子じゃあちゃんと反省してんだろ。あいつらはもうどうでもいい、俺が本当に腹が立ってんのは、別の奴等だ」

奴らが去った後を睨みつけるように見ながらそう吐き捨てれば、南は神妙な顔で頷いた。
そう、あの三人は雇われただけだ。黒幕が誰かなんてのはもう分かりきっている。あっちが本気で俺を潰そうと行動を始めたなら、俺も何かしら迎え撃つ準備をしなきゃならない。…が、その前に、俺にはやる事がある。
そう呟くように言うと南は訝しげに、口を開いた。



「何だ?やる事って」
「仕事だ」




数秒の間の後、何故か生徒会室に南の大きな溜め息が響き渡った。





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