恭ちゃんはぽかんとした顔も可愛いなあ、とのんきに思いつつ既に緩められていたベルトに手を掛けズボンをずり下ろせば、固まっていた恭夜が我に返った様に暴れだした。が、薬のせいでその抵抗も全く四谷には効かず、思わず眉尻を下げて苦笑する。途端、物凄い勢いで睨まれた。
「っ笑っ、てんじゃ……ねぇッ、どけよ馬鹿、触ん、な!」
「…別にな、放置してもええけど、恭ちゃんは我慢出来るん?言うとくけど自然に薬が抜けるには2、3時間位かかると思うで。それとも一人でここでするか?」
「……っ…」
「…分かったら、大人しゅうしとき。悪いようにはせえへん」
そう呟く様に言い聞かせ、ギシリと音を立てながらベッドの上に座る。少しだけ抵抗の弱まった相手のソレは既にゆるく勃ちあがっており、そっと触れば大袈裟な位に身体が跳ねた。
この程度でこの反応なら、この先の事をすればかなりヤバいんじゃないかと心の片隅で考える。唇の端を噛み締めながら耐えている様子である恭夜の耳元に近付くと、ぴくりと喉元が動くのが分かった。

「恭ちゃん、声抑えて、な」
「…は…っ、んァッ、……ッ!!」

先端を僅かに擦っただけで掠れた声が口から出たことに本人が一番びっくりした様子だった。サッと顔が朱に染まったと思えば盛大な舌打ちを打ち、枕に顔を埋めてしまう。どうやら利害を考え四谷が触る事は許された様だが、出来るなら顔を見ていたいと思うのは贅沢な事だろうか。
「何や、顔隠してまうんかい」
「っ、…っせぇ…ッ」
「はは、ほーんまかわええ…まあええわ、ちゃんと泣いてな」
「!……〜〜ッ、ッ!!」
濡れてきたそれをくちゅくちゅと卑猥な音を伴いながらも擦り続ける。ビクビクと身体を跳ねさせながらも必死に声を出すまいと口を押さえる彼の目から生理的な涙が落ちるのを見て、四谷は目を細めた。
もっと、泣けば良い。全部を吐き出せばきっと、今よりは楽になる。
恭夜が中等部に入った時から、四谷は彼の事を見ていた。だから、知っている。誰かと居るときは勿論、一人の時でさえ彼は決して泣こうとはしない。泣くことは弱さの表れでは無いことを知っているのに、彼の矜持がそれを無意識下で許さない。

――難儀な性格やな。

四谷はそう小さく、呟いた。快楽に飲まれまいと必死に抗う恭夜の耳に、その言葉は届かなかったが。



手の動きを少しだけ早めれば、彼は小さな悲鳴にも似た矯声を上げ呆気なく果てた。
荒い息を繰り返す恭夜の頬から流れる汗を拭ってやれば、それだけでぴくりと身体は反応する。
気付いた様に下半身を見やればイったばかりだと言うのに、既に再びゆるゆると勃ちあがっていた。そんな自分が信じられないらしく、恭夜は顔を歪ませながら何で、と掠れた声で呟く。
「…安心しい、抜けきるまでやったるわ。ったく、ガキがこんなもん使いよって」
「ッア、っ…いきなり、触るなァッ、ふっ…くそ、やろ…!」
「お口悪いのは変わらんねぇ。こんな乱れた恭ちゃん前にして、俺のマグナム取り出さん事に感謝して欲しいわ。後でトイレ行って一人で抜かな」
「ハッ、は…んなも、ん……知らね、ンあァッ!!!」
四谷の言葉に吐き出す様な返事をしていればいきなり軽く引っ掻かれ、恭夜はまたイった。熱さは治まるどころか酷くなる一方で、頭の芯がぼんやりとして何も考えられない。僅かに残った理性だけが、頼みの綱だった。何でこんな事に、そんな言葉が何処からか出てきたが再び与えられる刺激にたちまち流される。

「ハッ、ハッ……ちく、しょ……ッ」

滲み出る悔しさ。
四谷に対してではなく、こんな状態に陥った原因である自分を何度も何度も罵倒した。もう自分には、少しでも声を抑えるというささやかな抵抗しか出来ない。
涙が込み上げてきた。生理的なものもあったが、それ以外の何かも混じっている様な気がした。四谷の前で泣くなんて冗談じゃないと止めようとすればする程、奥からせき上げるものに負けてしまう。
嗚咽を上げながら、恭夜は枕に顔を埋めて泣いた。その様子を、四谷はただ黙って、見詰めていた。






****






「…どんだけ強力なの入れられたんや、恭ちゃん」

微かな寝息を立てながら眠る恭夜の頭をゆっくりと撫でつつ、四谷は溜め息混じりにに一人呟いた。
あれから3回続けて射精した彼は疲れきったのだろう、現在熟睡状態である。泣き腫らして赤くなっている目尻を軽くなぞっても何の反応も無い。眠っている彼の横顔は存外幼く、四谷は思わず笑みを溢した。


(…まだ、18歳やもんな)


悩む事も、後悔する事も当たり前の年だ。幾ら大人びているとは言え、実際は皆と変わらない、ただの高校生で。
今現在彼の置かれている状況は、余りにも重い。何でもない様な顔をしていても、いつかはそのツケがくる。

四谷は顔を上げた。

生徒同士の争いに、教師が口を挟む事はこの学園では原則として禁止されている。それに四谷が恭夜を助けようとしても、彼はそれを望まないだろう。…本当は気が狂う位に、助けたいと思っているのだが。



――だから、今だけ。



(今だけは、…ゆっくり休みぃ)



保健室は癒される場所やからな。
そう微笑みながら呟き、四谷は再び恭夜の髪を優しく撫ぜた。






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