眉をひそめる俺に落ち込んだように肩を落としつつ、花岡は何だか泣きそうな声であの、とぼそぼそ喋り出した。

「…他の人達も、皆最初は会長の事信じてたんです。会長が仕事放棄するわけ、ないって。でも、何か恭夜様が他のセフレと…その、親衛隊じゃない人と、…してるって噂が流れて…皆裏切られた気に、なっちゃったんです。それで……」
「………」

…俺は、深い溜め息をついた。成る程やってくれる、確かに俺を潰す際一番邪魔になるのは親衛隊の存在だ。しっかりと対策は打っていたらしい、悪知恵が働くってのはこの事だ。こぞって居なくなったのはそれが理由か。
紫雲も苦々しい顔をしながら話を聞いているが、まあ冷静に考えればそんな噂だけで抜けるっつー事はそこまで俺にお熱って訳でも無かったんだろう。正直余り気にならない。
気を切り換えてわざわざ生徒会室にまで来た彼らの話を聞こうとそれで、と目の前の3人に視線を戻す。と、先程まで俯き加減に話をしていた花岡がぐいっと顔を上げた。口を真一文字にして俺を見てくるその強い意志のある目に、俺は少々驚いて一つ瞬きをする。こんな何時でもプルプルと震えていそうな奴に、こんな目が出来るとは思わなかった。

花岡は一回息を吸って、拳を握ると―――パソコンを打ちつつこちらの様子を伺っていた翼が思わず飛び上がる程の、大きい声で、言った。



「あ、の!!僕達に、お仕事手伝わせて下さいっ!!!」



………。
……、………あ?
唖然としてる間に、花岡の言葉を受けて横にいた並河と北城も「お願いします!!」と叫びながら頭を下げてくる。目をぱちくりとさせながら彼等を見やると、それをどうとったのか慌てた様に花岡が続けた。
「せ、生徒会室に僕達みたいなのが居たらいけないのは知っています!でも僕達紫雲様から恭夜様が大変だって、聞いて…力に、なりたいんです!簡単なものしか出来ませんけど、部屋に持って帰ってやりますから!」
だから、手伝わせて下さい!と再び体を真っ二つに折り曲げんばかりに頭を下げる3人に困惑して、俺は紫雲に視線を移した。すると彼は中継ぎなら僕がやるよと、微笑みながら言ってくる。………いやいや。

「おま……、……何を言ったんだよこいつらに……」
「別に大した事なんか言ってないよ。恭夜が仕事に追われてこのままじゃ睡眠不足になって栄養失調になって挙げ句の果ては過労死しちゃうかも〜って言っただけで」
「誰がそんな情けねぇ事になるか!…ったく…仕事の事は誰にも言うなっつったろ」
「あのねぇ、体面保つのは君らしいけどそうも言ってられないでしょ。どうすんの、この仕事の山。クロちんも大変なんだから、また頼る訳にはいかないでしょ」

溜め息混じりにそう言う紫雲に俺はそっぽを向く。言われずとも、黒井にまた手伝って貰うつもりはない。俺より遥かに大変な仕事を請け負ってんだ、まぁあいつんトコの委員はボイコットなんかしねぇが。
とまぁそんな事を考えつつ思わず不機嫌になった俺に、花岡は顔色を窺いながらおずおずと口を開いた。
「あ、の……やっぱり、僕達じゃ…お役に立てないでしょうか…」
「………」
目に見えてしょんぼりしている3人組に眉尻を下げつつ、俺は苦笑した。机の引き出しをおもむろに開け、そこから一つの鍵を取り出す。目をパチパチさせる彼等にそれを放り投げれば、慌てた様にわたわたとキャッチした。
「そこにある奧の部屋の鍵だ。一々部屋からここまで来んのも面倒だろ、……そこでやれ」
「!って…手伝わせて、下さるんですか!?」
「は?馬鹿言ってんじゃねぇよ」
顔を上げてキラキラした目をこちらに向けてくる花岡に鼻を鳴らしてそう言えば、面白い位にがっかりした様に肩を落とした。一々反応が素直で思わず喉で笑う。
恨めしそうな顔で俺を見てくる彼等にふ、と息を吐きつつ、真正面から3人を見詰めた。
…幾ら俺でも、『手伝わせてやる』なんて馬鹿みてーな事、言うわけねぇだろうが。



「花岡、並河、北城。…言いたかないが仕事がくそ溜まってんのは本当だ。――悪いが、手伝ってくれ」



俺の言葉に、彼等はぽかんとした。その顔がみるみるうちに輝いていくのを、思わず口元を緩めながら眺める。チワワっつーか、アレだな、ダックスフンドだ。むしろ七人の小人か?人数は3人だけどな。…いや、そうなると俺が白雪姫っつー事になんのか。やっぱり却下。



有難うございます!!!とこれまた部屋中に響き渡る大声で礼を言う3人に、俺と紫雲と翼は笑った。






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