何から何まで最悪だ。




溜まりに溜まった書類の一番上に手を伸ばしながら、俺は思わず盛大に舌打ちを打った。が、そんな些細な苛立ちなど室内にて騒ぎ立てている馬鹿共には届かなかった様子。
そろそろ5人分の変死体が並んでも可笑しくない位、俺の苛々は最高潮である。
そもそもの発端は、あの糞転校生がこの学園に来た事だ。思い出すのも煩わしい―――2週間前の、事。






私立宝城学園。
金持ちが集まるこの学園は、幼等部から高等部まで繋がっているエスカレーター式の男子校だ。
木々が生い茂る片田舎にひっそりと、しかし壮大に位置しており、外部の人間が入ってくる様な事は滅多にない。
そんな閉鎖的な空間に、思春期の男共を放り込めばどうなるか―――そりゃまあ、結果は見えている。ホモとバイの巣屈になる事間違いなしだ。実際強姦まがいの事件が起こる事も、少なくない。
『抱きたい』『抱かれたい』ランキングなんていう阿呆なものも存在していて、それぞれの投票数で上位を占めた4人が生徒会役員に選ばれる事になっている(ちなみに今は会計二人のくそ下らん我が侭のお陰で5人になってるけどな)。
何とも馬鹿らしい制度だが何年も前から存在している故、今更止めようという声も無い。
そしてまた、生徒会役員には特権が幾つかある。授業免除・特別寮室・何処でも使えるゴールドカードの使用等。
甘やかしすぎだと言われそうだが、この学園の特色は『生徒の自主性を重んじる』だとか何とか、まあとりあえず放任主義という訳で。
必然的にイベントに専ら駆り出されるのはトップである生徒会で、それと委員会が協力しあって行事を行わなければならない。つまり、物凄く忙しい。特権が無ければやってられないのだ。

そんな何とも言えない、まかり間違っても”普通”ではない生徒会に入り――しかも、生徒会長になっちまったのが、この俺。御堂島恭夜だ。
何でも『抱かれたい』ランキングぶっちぎり1位だったらしい。うぜぇ。
意味の分からん大層な名字と所謂「俺様」と呼ばれる性格のせいでよく誤解されるが、俺の家は決して金持ちでは無い。極々普通の一般庶民だ。

ただ、家がセレブの住宅地のすぐ側にあっただけで。

俺が3歳の時、隣(と言っても大分離れているが)の奥様とうちの母親が何故か意気投合。
どうやら同い年の子供がいるらしい。それじゃあ一緒の幼稚園に行かせましょう――という展開になり、そして親父の必死な働きっぷりにより、俺は晴れてこの超セレブ学園に入学する事になったわけだ。
その後は俺の涙ぐましい努力の連続。これ以上親に負担は掛けられないと奨学金の為に勉強、勉強、勉強の毎日。要領は良かった為それ程苦じゃあなかったが本当に勉強漬けの日々だった。まあお陰で今両親に迷惑を掛けずに学校に行けてる訳だが。
ちなみにもう一つ言っておくが、俺は確かに俺様で自己中だ。が、正直そうなっても良いと思う位には俺自身の努力をしているのであり、他の奴等の様にただの親の七光りで偉ぶっている訳じゃあねぇと言いたい。
そりゃまあ顔は両親から貰った訳だから何ともし難いが(そんでもって自分でも認める位には美形だと思うが)、とりあえずあんな阿呆共と一緒にされるのは心底心外だ。






とにもかくにも、俺はそんな決して普通では無い人生を送りながらも、それなりに平穏に暮らしていたんだ。
―――そう、2週間前、季節外れの転校生がこの学園に来るまでは。




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